絶対悲観主義の概念

仕事は趣味とは異なります。趣味でないものが仕事、仕事でないものが趣味、というのが僕の整理です。趣味は徹頭徹尾自分のためにやることです。自分が楽しければそれでいい。一方の仕事は誰かのためにすることです。自分以外の他者に何らかの価値を提供できなければ仕事とは言えません。

したがって、あらゆる仕事には「お客」が存在します。お客はコントロールできません。イーロン・マスクさんでも、お客にテスラのクルマを無理やり買わせることはできません。ここで言う「お客」は実際に対価を支払ってくれる取引先やクライアントやユーザーや消費者だけではありません。同じ会社の上司や部下であっても、自分の仕事を必要としてくれる人はお客です。

仕事は定義からしてこちらの思い通りにならないものです。事後的な成果や成功はコントロールできない。それでも事前の構えは自分で自由に選択できます。仕事が何らかの哲学を必要とするゆえんです。

仕事である以上、絶対に自分の思い通りにはならないと僕は割り切っています。「世の中は甘くない」「物事は自分に都合のいいようにはならない」、もっと言えば「うまくいくことなんてひとつもない」──これが絶対悲観主義です。

ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイントです。仕事の種類や性質、状況にかかわらず、あらゆることについてうまくいかないという前提を持っておく。何事においても「うまくいかないだろうな」と構えておいて、「ま、ちょっとやってみるか……」。これが絶対悲観主義者の思考と行動です。

ご安心ください。何も「自分に厳しい」わけではありません。僕は他人にはわりと甘いほうですが、自分にはもっと甘いタイプです。成功しなければならないという呪縛から自分を解放する。厳しい成果基準を自らに課さない。自分に対して甘い人ほど、絶対悲観主義は有効にして有用です。