成人向けマンガがつくる新しい表現、新しい感覚

確かに、好きな人がいてもなかなか告白できない心理はよくわかる。ましてや現代では「草食系男子」という言葉があらわれて久しい。筆者もまたそのひとりだが、うじうじして告白もできない男子とヤリヤリ男子の格差は広がるばかりだろう。こうした時代に「BSS」という分野が生まれるのは必然ともいえる。

しかし、そこで感じるのは日本のマンガ表現の奥深さだ。ネトラレ自体は普遍的で、海外でもなかなかの紳士がいる。たとえば、マゾヒスムの語源となったチェコの作家、ザッヘル・マゾッホの『毛皮を着たビーナス』はドMの話であるのと同時に、ネトラレに萌える男の話でもある。こうした密やかな感覚を「発見」し、取り込む。そしてさらに探究を進め「BSS」に至る。

成人向けというと「実用的なジャンル」と見られるが、恐らくは実用性を追求するうちに、さらに新しい表現、新しい感覚に踏み込み、開発に至った。こうした「探究」の裾野の広さが、日本のマンガ表現そのものを支えていることは間違いないだろう。『カラミざかり』も成人向けというジャンルを越えた青春マンガとして、講談社ヤンマガWebにおいてリメイクされている。

コロナ禍を経た現在では、あまり鬱々とした展開は好まれない傾向があるという。しかし「ネトラレ」はすっかり定番化し、筆者がサイトを開くとリアルタイムの今も「僕の彼女が鬼畜顧問の先生に」などといったマンガのバナーが表示される。成人マンガの世界は広く、深い。

取材・文/堀田純司