「こういうまっすぐな作品を好きじゃなくなったらダメやな」と思う1冊
『リアル』井上雄彦(集英社)
受験指導専門の進学塾で飛び級するほどの秀才ぶりを発揮し、名門・灘中学に入学したベテランち。その頃には小説よりもマンガを好むようになり、福満しげゆきなどの作品を愛読してたという。特にハマったのが、車椅子バスケを描いた井上雄彦の『リアル』だった。
「当時からサブカルの芽生えみたいなのはあったんで、マンガも音楽も人と違うものを知ってるのがカッコいい、みたいな感じはありました。『リアル』は王道のスポーツマンガではないですけど、“マンガ力”がめちゃくちゃ高いというか。中高とサブカルに傾倒していったんですけど、こういうまっすぐな作品を好きじゃなくなったらダメやな、と思いましたね」
スポーツ漫画に夢中になる一方で、男子校の進学校という特殊な環境でのバランス感覚も意識していたという。
「中高と男子校で育ったんで、『男の子性』との距離の取り方はけっこう意識していました。周りもみんなそれぞれ思うところはあったんでしょうけど、基本的にはよくある男の子社会というか、スポーツやってるやつとか面白いやつとか強いやつがカッコいい、みたいな空気はあったんで。そこに乗っかりすぎず離れすぎず、みたいなことは常に考えてましたね」