代官山は好きな街
――10年後を見据え、2014年に辿り着いたのが今の作風だったとのことですが、あと2年で10年が経ちますね。
そうなんです。だから、次のステップに行く移行期間ではあるのかなと思っています。自分の中でも10年一区切りと考えているので。
今回「ルーフ ミュージアム」のメインビジュアルに据えているのが、個展のタイトルにもなっている、マティスの「Pink Nude」をベースに描いた作品。過去に描いてきた絵たちを見て「次にどこに進もうかな」と考えたときに、「Pink Nude」を軸に置いて、ここから芽を伸ばしていくとおもしろいことが出来るんじゃないかなと思ったんです。生み出す作業は苦しいかもしれないけれど、どんなふうに変わっていくのか、自分でも楽しみです。
――ちなみに「ルーフ ミュージアム」がある代官山に、特別な思い入れは?
「代官山 蔦屋書店」は大好きな場所です。最初に自費出版で作った作品集も販売してもらいました。初版で500冊作ったんですけど、2週間くらいで全部売れるくらい反響があって。すごくお世話になりましたね。アップルパイやチーズケーキが美味しい「松之助NY」も好きで、代官山に行けば必ず立ち寄って買って帰ります。
あと、去年からクリスマスツリーを家に飾るようになりまして。僕は前からすっごく欲しかったんだけど、家族があんまり賛同してくれなくて(笑)。どうしても飾りたいと説得して、念願のにぎやかなクリスマスツリーを完成させたんです。1年中クリスマス関連の商品を扱っている「クリスマスカンパニー」でオーナメントいっぱい買いました。ちょっと足りないなって思ったら、またすぐ買い出しに来たり。好きなお店がたくさんあるし、代官山には思い入れはありますね。
――「ルーフ ミュージアム」は2階のギャラリーだけでなく、1階カフェスペースも素敵です。どんな風に楽しんでもらいたいですか?
アーティストや絵を購入されたコレクターの方は、一枚の作品をじっくり見る時間があるんですが、鑑賞する人は長く時間をかけて見る機会がないと思うんです。割とサーっと見ちゃったりするじゃないですか。オーナーは、ゆっくり絵を見て過ごせる時間を提供したいとおっしゃっていて、すごくいいなと思いました。ギャラリーは余計なものがないのでゆっくり、じっくり鑑賞することができますし、疲れたらカフェでくつろぐこともできる。インテリアは1930年代のデンマークの家具を集めているし、JBLのスピーカーやマランツの真空管アンプ、ガラードのレコードプレーヤーもあるから音もすごくいいんです。温かみのある空間なので、ぜひ、足を運んでもらえたらうれしいです。
取材・文/松山梢 撮影/石田荘一