極右の強さは「循環」にある

「極右はネットに強い」。それ自体は間違いではない。だが、極右の本当の強さは、ネットだけに閉じた情報空間を築いたことではなく、ネットと主流メディア、周縁と中心を往復する循環をつくり出したことにある。

極右はかつて、新聞やテレビで十分な発言機会を得られなかったため、自前の媒体をつくり、ネット上に活動の場を築いた。ところが、そこで大量の注目と視聴数を獲得すると、今度は視聴率や広告収入を求める主流メディアが、極右の人物や論点を番組へ取り込むようになる。

SNS上で仕掛けられた論争がテレビで増幅され、その放送映像が「切り抜き」となって再びSNSへ戻っていく。極右は商業メディアに視聴率と話題をもたらし、商業メディアは極右に社会的な認知と全国的な発信力を与える。両者は対立しているように見えながら、実際には互いを必要とし、互いを増幅させているのである。

極右の支持者もまた、二つの情報空間を行き来している。一つは、テレビや新聞から社会で起きている出来事を受け取る「外側の公共圏」であり、もう一つは、極右系メディアや政治家のSNS、家族や友人との情報共有を通じて、それらの出来事に独自の意味を与える「内側の公共圏」である。

主流メディアを信用しないと言いながら、その報道を材料として利用し、「メディアが隠している真実」という物語へ組み替える。こうした「二重の公共圏」がかみ合うことで、主流メディアの発信も、極右の政治的影響力へと変換されていく。だとすれば、極右への対抗を「もっと上手にSNSを使うこと」へ還元してはならない。問題がネット、テレビ、広告市場、メディア所有、政治権力を結ぶ循環構造にある以上、対抗策もまた、こうした構造そのものに切り込む必要がある。

まずは、メディアの所有構造に切り込むことである。メディア所有者の政治介入を規制し、編集部の独立を保障するとともに、広告や富豪に依存しない独立メディアと公共放送を支えなければならない。

また、極右に無条件の可視性を与える「ショーケース」を作らないことも重要だ。彼らが仕掛けた炎上や挑発を自動的にニュースにせず、扱う場合には、発信者の経歴や思想、過去の差別発言まで含めて伝える。また、憎悪や対立を収益化し、その拡散を支えるプラットフォーム側の責任も問う必要がある。違法な憎悪扇動や利用規約違反に対しては広告配信や収益化を停止し、放送事業者が違反を繰り返す場合には、規制当局が放送免許を更新しないなど、実効的な措置が求められる。

しかし、規制だけでも足りない。極右が動画、音楽、出版、娯楽を通じて一つの文化を築いている以上、対抗する側もまた、別の文化と世界の見方を作る必要がある。動画、配信、ポッドキャスト、音楽、歴史解説などを通じて、極右とは異なる世界の見方を提案する。

政府による上からの啓発よりも、ネット文化を理解した発信者が、その場に合った形式でつくる「下からの対抗言説」のほうが力になる。その際、すでにメディアで主流になった極右の語彙や問題設定を借りれば、最終的には極右を正当化するだけである。必要なのは、メディアを利用しながらも、そこで支配的な問題設定には隷属せず、独自の論点を保つことだ。

極右が築いたのは、単なるネット上の人気ではない。彼らの真の強みは、思想、娯楽、広告、テレビ、出版、政治を結び、注目を影響力へ、影響力をさらに大きな注目へと変える循環である。したがって、それに対抗する側も、制度改革、ジャーナリズム、独立メディア、文化運動を結び直さなければならない。問われているのは、誰がSNSをうまく使うかだけではない。何がニュースになり、誰の言葉が社会に届くのかを決める仕組みそのものなのである。

文/森野咲

参考文献

Dominique Albertini, David Doucet, La Fachosphère. Comment l’extrême droite remporte la bataille d’Internet, Flammarion, 2016.
Achraf Ben Brahim, Pourquoi l’extrême droite domine la toile. Le grand remplacement numérique, Éditions de l’Aube, 2023.
Marie Bénilde, Le péril Bolloré, La Dispute, 2025.
Samuel Bouron, Politiser la haine. La bataille culturelle de l’extrême droite identitaire, La Dispute, 2025.
Pierre Plottu, Maxime Macé, Pop fascisme. Comment l’extrême droite a gagné la bataille culturelle sur Internet, Éditions Divergences, 2024.
本間圭一, 『フランス極右とメディア——公共圏の歴史的変遷』, 勁草書房, 2025.