極右インフルエンサーとビジネス
「極右ネット界隈」を持続させているのは、思想的な情熱だけではない。そこには、再生数や商品販売によって成り立つ独自の経済圏が形成されている。動画の再生は広告収入につながり、知名度は書籍やグッズ、講座、コーチング、サプリメントなどの販売に利用される。支持者を集めることと、その支持者を顧客に変えることが、一つの活動のなかで結びついているのだ。
極右インフルエンサーに多く共通する特徴は、政治思想を直接説くよりも、あくまでその思想に適合する「生き方」を提示し、商品化することにある。筋肉を鍛える、肉を食べる、武器やサバイバル技術を身につける、女性を口説く、家族をつくる、規律と自信を取り戻す――こうした一見すると非政治的なテーマにも、「強い男性」「伝統的な男女関係」「自力で生き残る個人」「衰退する社会への備え」といった極右的な価値観が埋め込まれているのだ。
「男性性の回復」を謳うインフルエンサーは、「筋肉をつける」「強い男になる」という自己啓発の言葉を使って、月額90ユーロの筋トレ指導を提供し、栄養サプリを売る。「フェミニズムによって男性は弱くなった」と説く者は、女性との出会い方を教える音声講座を販売し、「支配的な男になる方法」をまとめた短い電子書籍や月額制の男性性講座へ誘導する。「社会はいずれ崩壊する」「自分の身は自分で守らなければならない」という世界観は、武器やサバイバル用品、自給自足の指南に変換される。「近代社会は人間を不健康にした」という自然回帰思想は、オーガニック食品や自然療法、サプリメント、高額なジュース抽出器の販売につながる。
「主流メディアが真実を隠している」「自分たちは体制から弾圧されている」という物語も、有料動画や独自プラットフォームへの加入を販売し、寄付を募るために利用される。さらには、そこで築いた支持者の信頼を利用して、動画編集や暗号資産投資など、政治とは直接関係のない数百ユーロの情報商材まで販売されている。
このような極右インフルエンサー界隈を「思想か、ビジネスか」と二者択一で捉えるだけでは不十分だ。刺激的な発信が人を集め、共通の敵や価値観が仲間意識を生む。インフルエンサーと支持者の間に生まれる擬似的な親密さが、商品購入や寄付へとつながる。
「攻撃されている発信者を支える」という物語も、支援に政治的な意味を与える。収益化を停止された発信者は、有料チャンネルや独自サイトへ移り、「体制から攻撃されている自分を支えてほしい」と訴える。思想が共同体をつくり、共同体が市場になり、その市場がまた思想の発信を支える。彼らが商品化しているのは、単なる講座やサプリではなく、極右の世界観に沿って設計された生活そのものなのである。












