戦争における殺戮は正当化される

かつては、戦争による被害は今と比べれば軽いものでした。犠牲者の数も今と比べたら少なかったのです。しかし、今日の兵器は恐ろしいもので、その被害は甚大なものになります。都市全体や数十万人の住民が、文字通り数秒で消し去られてしまうこともあります。

一部の核保有国には、人類全体を滅ぼす能力さえあります。「普通の」兵器でさえ、一国のすべての住民を殺戮し、破壊する力を持っています。

私は戦争を憎んでいます。なぜなら、それは人々、主に罪のない人々を殺すことだからです。私たちはひとりの人間を殺すことを殺人という罪とみなします。しかし、戦争における数千人、あるいは数百万人の殺戮については、正当なものとしてしまうのです。

殺戮者たちは、英雄とさえされています。これは正しいことではないはずです。私たちは、兵士を派遣して人々を殺させる人々もまた、戦犯としてあつかう必要があります。

こうした理由から、私たちは防衛戦争を除くあらゆる戦争を犯罪とし、戦争を起こす者を処罰するためのキャンペーンを開始しました。

このキャンペーンを推進するため、私たちは「戦争の犯罪化」に向けた取り組みに特化したNGO(The Kuala Lumpur Foundation to Criminalise War:KLFCW)を2007年に設立し、雑誌も発行しています。これを通じて、より多くの人々、特に「砲弾の餌食」として利用されることになる若者たちに、戦争の犯罪性と、それを非合法化する必要性を理解してもらいたいと願っています。

マハティール・モハマド氏 写真/アフロ
マハティール・モハマド氏 写真/アフロ
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私たちは、紛争の平和的解決を最優先とする反戦文化を浸透させなければなりません。戦争を道徳的に間違ったものとしなければなりません。戦争は原始的です。それは成功を収めるために野蛮な人々が採る手段に過ぎません。

現代の文明化された社会において、戦争をする余地はありません。戦争は、私たちに与えられた自然の恵みを傷付け、破壊し、すべてを荒廃させます。戦争を仕掛ける者たちは野蛮人と何ら変わりなく、最も厳しい処罰に値する犯罪者として非難されるべきなのです。

著者/マハティール・モハマド 編・訳/久志本 裕子

マハティール 百年の思想 イスラーム、日本、脱植民地主義への道
マハティール・モハマド (著), 久志本 裕子(編・訳)
マハティール 百年の思想 イスラーム、日本、脱植民地主義への道
2026/9/17
1,144円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4087214291
なぜマレーシア元首相マハティールは、日本に希望を見たのか。
1世紀を生き、植民地支配、日本占領、独立、国家建設と発展をその目で見つめてきた彼の思想の核心は、単なる反欧米でも経済成長至上主義でもなく、イスラームの倫理を基盤とした公正な社会と世界平和への希求にあった。
本書は、彼の日本への高い評価とルックイースト政策の真意、植民地主義を超える視座、宗教間共生への提言を立体的に描く。混迷する国際社会のなかで、日本とアジアが果たすべき役割を問い直す、百年の知恵が凝縮された1冊。

◆「はじめに」より◆
今日の日本は、地域の大国間で高まりつつある緊張を背景に、自国の役割を模索して、内なる葛藤に直面しているように見えます。
日本は、明確な立場を打ち出し、いかなる影響にも左右されないだけの勇気を持たなければなりません。
日本には独自の強みがあり、地域の緊張や紛争、さらには戦争の可能性を高めるような特定の陣営に与するべきではありません。
ーーマハティール・モハマド

◆目次◆
第1章 イギリス植民地統治下の少年時代
第2章 日本との出会い
第3章 思想の原点
第4章 イスラームはなぜ誤解されるのか
第5章 宗教の共生は可能か
第6章 モデルとしての日本
第7章 公正な世界に向けた日本とマレーシアの役割
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