「バズる政府広報」に必要なのは面白さだけではない

民間企業と政府機関のSNSには、大きな違いがある。

企業アカウントなら、商品を魅力的に見せることが大きな目的になる。しかし政府公式アカウントの場合、発信する情報には「国が公式に発信した」という重みがつく。

写真一枚でも、切り取り方や加工、文章の付け方によって受け手の印象は変わる。

今回の写真が事実と異なる情報を伝えているわけではない。ただ、政策や人事の説明よりも「作品としての面白さ」が前面に出れば、政府広報の目的が「知らせること」なのか、「注目を集めること」なのかが分かりにくくなる可能性はある。

内閣官房の通常のSNS運用ポリシーは、業務や取り組みを発信して国民の理解を深め、利便性を高めることを目的としている。また、掲載情報については「正確性について万全を期す」と明記している。

SNSで注目を集める技術と、行政への信頼を守ること。その二つをどう両立するかが問われる。

似た問題は別の省庁でも起きた。

法務省は8月、Netflixの恋愛リアリティー番組『ラヴ上等 シーズン2』と更生保護のタイアップを実施したが、犯罪被害者の心情への配慮に欠けるのではないか、などの批判を受け、8月21日にタイアップを取りやめた。平口洋法相もその後の会見で、こうした批判や、更生保護に携わってきた人からの心配の声を踏まえた判断だったと説明している。

法務省と『ラヴ上等』のコラボポスタービジュアル(法務省プレスリリース)
法務省と『ラヴ上等』のコラボポスタービジュアル(法務省プレスリリース)
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もちろん、内閣広報官Xの写真加工と『ラヴ上等』のタイアップは性質が違う。

ただ、共通するのは、行政が従来とは違う方法で人々に近づこうとしたとき、「面白い」「目立つ」という尺度だけでは測れない問題が生まれるということだろう。

政府がSNSを使うこと自体は、今や特別なことではない。速報性を生かして情報を直接届けられるメリットも大きい。

だからこそ重要になるのは、「バズったか」だけではなく、その投稿から必要な情報へたどり着けるか、事実と演出が区別できるか、そして政府への信頼を損なわない形になっているかという視点ではないだろうか。

親しみやすい政府広報と、信頼できる政府広報は、必ずしも相反するものではない。その境界をどこに引くのか。今回の投稿は、政府公式SNSが「色々投稿を試す」時代だからこその課題を浮かび上がらせている。

文/集英社オンライン編集部