最終盤に出た「陰謀」との言葉

「裏事実がある」と先に結論を置けば、政府が水面下で沖縄を差し出したという物語になる。

投票前日には、玉城氏自身がついに「陰謀」という言葉まで使った。9月12日のラストスパート集会で、「相手候補を応援する側が私に何万、何十万と誹謗中傷をたたみかけるように浴びせかけてきた」と訴え、「玉城デニーを勝たせることで、陰謀に負けない、本当の私たちの沖縄のリーダーを私たちが選ぶんだ」と呼びかけたのである。

自ら「陰謀に負けない」と語った玉城デニー氏(撮影/集英社オンライン)
自ら「陰謀に負けない」と語った玉城デニー氏(撮影/集英社オンライン)

誹謗中傷が大量にあったこと自体は否定しない。問題は、その先だ。「陰謀」と呼ぶなら、誰と誰が、どんな形で示し合わせていたのか。その証拠が必要になる。

少なくともこの演説で、玉城氏は具体的な共謀の証拠を示していない。選挙戦の最終盤に、相手側からの中傷をひとまとめにして「陰謀」と呼んだ。敗戦後にSNSで有権者の選択がゆがめられると語った流れは、選挙期間中からすでに出来上がっていたのである。

そして今回の知事選を考えるうえで、もう一つ外してはいけないのが選挙結果そのものだ。

古謝氏は423,124票、玉城氏は276,060票。差は147,064票だった。接戦ではない。

共同通信の出口調査では、投票先を決める際に最も重視した問題として「経済の活性化」を挙げた人が49.5%、「基地問題」は20.9%だった。経済を重視した人の78.7%が古謝氏に投票し、基地問題を重視した人の72.9%は玉城氏を選んだ。

争点は基地だけではなく、経済が最多に

今回の沖縄知事選、有権者の関心は基地問題だけに集中していなかった
今回の沖縄知事選、有権者の関心は基地問題だけに集中していなかった

今回の選挙で、有権者の関心は基地問題だけに集中していなかった。物価、賃金、雇用、観光、子育て。日々の暮らしに直結する経済が、投票判断の中心に移った。前回の知事選で玉城氏に投票したと答えた人の30.8%も、今回は古謝氏に投票した。10代から30代では古謝氏が7割を超えた。

同じ出口調査では、無党派層では玉城氏が古謝氏を上回っている。つまり、単純な「県民総出で古謝支持」という話でもない。組織票、年代、争点ごとに投票行動は分かれている。それでも、14万票を超える差がつき、経済重視層の大半が古謝氏に流れたという事実は消えない。

SNS上のデマや誹謗中傷が選挙にどこまで影響したのかは、現時点では分からない。少なくとも14万票を超える差との因果関係を語るのであれば、その影響を示す客観的な検証が必要だろう。