問われるのは「証拠を示せ」の一点
自民党本部と下地氏が政策協定を結び、下地氏が出馬を取りやめたのは事実である。だが「裏取引」について少なくとも公に確認できる根拠は示されていない。自民党側も下地氏側も否定し、投稿はその日のうちに削除された。
翌2日、玉城氏は「不確かな情報に対しては積極的にそれを拡散しようという意図はまったくありません」と説明し、「手違いということで申し訳ありませんでした」と謝罪した。陣営は、投稿はスタッフによるもので、元になったのは選対本部長の演説だったと説明している。
誰が投稿ボタンを押したかは本質ではない。候補者本人の公式アカウントから出た以上、それは陣営の情報発信である。相手陣営について「裏取引」とまで書くなら、それに見合う証拠が必要だ。
証拠を示さないまま「裏取引」「琉球処分」と結びつけ、後から「不確かな情報だった」と認めた。この経緯は、玉城氏が敗戦後に語ったSNSへの警戒とは両立しえない。
これをもって「玉城デニーは陰謀論者だ」と言い切る必要はない。政府を批判すること自体は陰謀論ではない。沖縄の基地負担を問題にすることも、政府の情報公開を疑うことも政治家の仕事である。
焦点はもっと狭い。秘密の「裏取引」があったと主張するなら、根拠を示せ、というだけの話だ。相手側のデマには厳しく、自陣営の未確認情報は「手違い」で済ませる。これでは基準が二つある。
演説で語られた「裏事実」は本当なのか
しかも、「裏取引」だけではない。告示日の8月27日、玉城氏本人は那覇市内の演説で、沖縄に「さらなる新たな『戦前』が持ち込まれようとしている」と訴えた。
さらに普天間飛行場の返還条件にある「長い滑走路」をめぐり、那覇空港が米軍に使われるのではないかと話を進め、「政府はそれを県民に約束できないから、アメリカと先に約束してしまったという、実は裏事実がある」とまで語った。
ひどいもんだ。米側が普天間返還の条件として、緊急時に長い滑走路を使える仕組みを求めていること自体は公文書で確認されている。ただし、「政府が県民に約束できないから、アメリカと先に約束した」という玉城氏の説明について、その因果関係を裏付ける具体的な根拠は、この演説では示されていない。
ちなみに防衛相は2月の公式会見で、具体的にどの滑走路を使うか「決まったことがあるわけではありません」と明言している。













