「幸」と「辛」は表裏一体…“正しさ”を押しつける人間たち
——「本来は単独で生きていくはずなのに」系の物語だと、オスのハリモグラを主人公にした第7話「幸せってなに?」もあります。彼は、自分たちの種の常識に異を唱えて、パートナーと共に暮らすことを選択した急進派です。しかも、結婚式まで挙げようとしている。でも、式に花嫁は現れず……。
ドリアン助川 花嫁は、「自分は知的なんだ」「俺、すごい」と思い込んで悦に入っている主人公に嫌気が差してしまったんです。結婚する前から、勝手に「自分の思う‟幸せ”とは?」みたいな理想論を滔々と語り出しちゃったりする。そんなの、相手にとってはただの押しつけでしかありませんからね。
——どことなく、SNSにおける「正しさ」のぶつけ合いのような、現代的な現象も想起させられました。
ドリアン助川 まさに、そういったことも念頭にありました。それからハリモグラは、名前のとおり全身がハリに覆われているのですが、彼らが抱き合うところを想像すると、すごく痛そうじゃないですか。
それと同じように、人間も愛し合うためには相当な痛みが伴うものだと思うんです。字が似ていることも象徴的ですが、「幸」と「辛」は表裏一体です。一緒に暮らせば、相手の嫌なところだって見えてくるでしょうし、「思っていたのとは違った!」みたいなことも珍しくありません。
でも、そこを乗り越えていくことが、相手を真に理解し、本当の愛を得ることにつながる。そういったことを表現したかったのですが、それだけだとシンプルすぎるかなと思い、少しばかり毒っぽい要素を加えてみることにしました。
それが、自信にあふれた者が自分の「正しさ」を過信しがちだったり、その結果ついつい間違った方向に進んでしまったりするという、いわば「人間あるある」だったんです。













