融資、土地、電池、原料、税制まで政府が有利にすれば、条件は同じではない

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中国製電気自動車をめぐる問題を、「安い車を消費者が買えて何が悪い」とだけ考えると、肝心な点を見落とす。

企業が市場で資金を調達し、技術を磨き、生産性を上げて安く売るなら、それは市場競争である。だが、融資、土地、電池、原料、税制まで政府が有利にすれば、条件は同じではない。

もちろん、中国EVの価格競争力のすべてを政府支援だけで説明できるわけではない。技術革新、巨大な国内市場、垂直統合、激しい国内競争などもコスト低下に寄与している。そのうえでEUが問題視したのが、そこに政府支援がどれだけ上乗せされているかだった。優れた車を作っているから、政府支援を無視してよいわけではない。

EUが見始めたのは、完成車の価格のウラ側である。なぜその価格で売れるのか。資金はどこから来たのか。土地や電池はいくらだったのか。欧州で売るだけなのか、それとも雇用や投資も持ってくるのか。中国製電気自動車をめぐる争いは、そこまで広がった。

問題は、中国車が安いことではない。その安さを作った条件まで、普通の市場競争として受け入れるのかである。EUは、そのまま受け入れないと判断している。

中国製EVの問題は、遠い欧州だけの話ではない。政府支援を背負った安さをどこまで市場競争として受け入れるか、という問いは、いずれ日本の産業と消費者にも向けられる。

安い車を歓迎するのか、その安さを作った条件まで見るのか。EUの選択は、日本がまだ正面から答えていない問いを、静かに突きつけている。

文/小倉健一