中国企業の海外成長を企業努力だけで説明するのは難しい

しかも、その支援は企業の市場シェア拡大と強く結び付いていた。一方で、生産性や利益が同じだけ改善したとは確認できなかった。

これは電気自動車だけを対象にした調査ではないが、OECDの分析によれば、中国企業の世界市場でのシェア拡大には政府支援が大きく寄与しており、その成長を企業自身の競争力だけで説明するのは難しい。

写真はイメージです
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調査では、中国側がどこまで情報を出したかも問題になった。欧州委員会は、中国政府や一部企業から必要な資料が十分に出なかったとして、手元にある別の資料を使って判断したのだ。

電池大手CATLは質問への回答をせず、SAICについても一部の金融支援で協力が不十分だったとされた。

中国側は、EUの調査は政治的だと批判している。調査方法に問題があると思うなら争えばよい。実際、中国はWTOでも争っている。

ただ、土地や融資、電池の価格が普通の市場取引で決まったと言うなら、その取引を示すのが分かりやすい。欧州委員会の認定を前提にすれば、必要とされた資料を十分に示さないまま調査結果を政治的だと批判しても、EU側を納得させるのは難しい。

EUは2024年、中国製電気自動車に追加関税をかけることを決めた。税率は企業ごとに異なり、調査への協力ぶりなども反映された。ここで大切なのは数字そのものではない。EUが、中国製電気自動車の安さを「普通の価格競争」とは見なさなかったことである。

中国メーカーは中国国内で欧州勢のシェアを奪い、状況に変化

EUが問題にしたのは、中国企業が強くなったこと自体ではない。政府支援によって輸出価格が押し下げられ、その状態が続けば欧州メーカーに重大な損害が生じると判断したのである。

欧州メーカーは、ガソリン車から電気自動車へ移るために工場や電池、ソフトウェアへ巨額の投資を続けている。被害が決定的になる前に相殺措置を取る、というのがEUの考え方だった。

ただし、欧州の国々が最初から一致していたわけではない。特にドイツは慎重だった。

フォルクスワーゲンやBMW、メルセデス・ベンツなどは中国で長く商売をしてきた。中国と対立すれば、報復を受けるおそれがある。中国市場で稼いでいる間は、強い対抗策を取りにくかったのである。

だが今、その前提が崩れ始めている。中国メーカーは中国国内で欧州勢のシェアを奪い、そのまま欧州市場にも出てくるようになった。

今年4月に開催された第19回北京国際自動車展示会
今年4月に開催された第19回北京国際自動車展示会

中国との対立を避けても、肝心の中国市場で欧州企業が負けるなら意味が薄れる。そのため2026年にはドイツ産業界からも、中国の不公正な競争にもっと強く対応すべきだという声が目立つようになった。