「更生の物語」と「更生保護の広報」は同じではない

エンターテインメントでは、強烈な過去や過激な言動は「キャラクター」になる。視聴者を驚かせる過去ほど映像として強く、予告編やSNSでも拡散されやすい。

だが法務省がタイアップした瞬間、その同じ表現には別の意味が加わる。

作品それ自体の評価と、行政がその作品を政策広報に採用することは分けて考える必要がある。国がタイアップに参加すれば、作品の内容とは別に、「この作品は更生保護という政策理念を伝えるのにふさわしい」という行政上の評価まで付加されるからだ。

しかも、更生とは過去の加害行為を魅力的なプロフィールに変換することではない。

自分がしたことの責任を引き受け、それでも社会から永久に排除されることなく生活を立て直していく。その二つを同時に成立させる営みのはずだ。

法務省自身もタイアップ中止の声明で、更生保護は過去の行為を肯定したり責任を曖昧にしたりするものではないと改めて説明している。犯罪被害者の尊厳や心情への配慮と、犯罪をした人の社会復帰支援は「いずれも」欠かせないとしている。

日本の法秩序の維持や、国民の権利擁護、出入国管理などを担当する中央省庁である法務省(写真/PhotoAC)
日本の法秩序の維持や、国民の権利擁護、出入国管理などを担当する中央省庁である法務省(写真/PhotoAC)

この説明は正しい。

だからこそ、「それならなぜ、その観点をタイアップ決定時に十分働かせられなかったのか」という疑問が残る。

似たような構図はYouTubeの人気コンテンツ『BreakingDown』にも見える。

BreakingDownは2024年、複数の過去出場選手が逮捕されたことを受けた公式声明の中で、根底には「過去に失敗したり、躓いたり、過ちを犯した人に再挑戦の機会を提供したい」という考えがあると説明した。

一方で、逮捕された過去出場選手を無期限の大会出場停止とし、「暴力や犯罪行為を一切容認せず」とも表明している。2023年にも出場選手の逮捕を受け、無期限出場停止の措置を取っている。

ここには、更生や再挑戦を扱うコンテンツが避けて通れない課題がある。

過去を問わないからこそセカンドチャンスになる。しかし、現在の行動まで問わなくなれば、それはセカンドチャンスではなく事実上の免責に近づく。

さらに、過激な人物ほど注目を集めるというエンタメの構造が加わると、「更生した人」が評価されるのか、「より壮絶な過去を持つ人」が評価されるのかという境界も曖昧になる。