あかねの未来への期待感じが止まらない

女子高校生が落語!? 週刊少年ジャンプで異彩を放つ『あかね噺』の魅力_g

『あかね噺』は落語を“魅せる”作品だ。ここでは作中で印象に残った落語の表現を、あかねの初高座から2点ピックアップした。

女子高校生が落語!? 週刊少年ジャンプで異彩を放つ『あかね噺』の魅力_h

あかねの持ち味は父親ゆずりの人物描写だ。複数人の登場人物の芝居を表情で描き分け、それぞれのセリフだと分かるように“フキダシの形を変えて”書き分けている。

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臨場感あふれる一席は、まるでマンガから声が聞こえてくるようである。噺はラストに向かい、やがてカタルシスが訪れる。

父の落語「芝浜」のテンポの良さや、あかねのライバルになりそうな阿良川 魁生(かいせい)の「稽古屋」に漂う色気、これらの表現もシビれた。今後もあかねの落語がマンガでどう表現されていくのか楽しみだ。

ただ落語が見事に表現されており、ストーリーがよくできているからこそ、気になることがある。父と父の落語が大好きだったあかねは、いま落語自体をどう思っているのだろうか。

自分が阿良川流の真打になって、阿良川一生を問い詰めて破門騒動の真相を聞く。ではその後は?

あかねが真打になる、つまり落語家として生きていくのであれば、純粋に落語を楽しむ心、落語への強い興味が必要なのではないだろうか。遠くない未来に、恩讐を超えて落語家であることの喜びが描かれると期待している。

あかねが父親の落語に魅せられたように、私はあかねの落語に心惹かれている。そこからさらに落語自体に興味を持ちはじめて、すでに落語の動画を見まくる毎日だ。

あかねが怖い。あかね噺が怖い。本作と落語の沼からは抜け出せそうにない。

文/古林恭   ©末永裕樹・馬上鷹将/集英社