「視界が真っ白に」登山者を襲った落雷の瞬間
民間気象会社ウェザーニュースは、2026年7~9月のゲリラ雷雨の発生回数が、全国で約11万回に上ると予想。昨年の約8万8000回を上回り、過去5年の平均よりも多くなる見込みだという。
遠くで雷鳴が聞こえているうちは、どこか現実味のないものに感じられるかもしれない。だが、雷は「近づいてから避ければいい」ものではない。気象庁によると、グラウンドやゴルフ場、砂浜などの開けた場所や、山頂、尾根といった高い場所では、人体に直接落雷することがあり、直撃を受けた場合の死亡率は約8割に上る。
太田さんが落雷に遭ったのは、2021年6月のこと。友人らと5人で、埼玉県秩父郡小鹿野町の二子山を登っていたときだった。
「登山を始めたのは2018年頃です。落雷に遭った2021年当時は、北アルプスの難関ルートに挑戦するためのトレーニングとして、二子山を訪れていたんです。午前中は天気予報どおりに晴れていましたが、山頂の手前あたりから雲行きが怪しくなり、到着した頃にはゲリラ豪雨が近づいているのが分かりました」(太田さん、以下同)
二子山は、東岳と西岳からなる石灰岩の岩峰で、最高地点は標高約1166メートル。ロッククライミングの名所としても知られ、太田さんらが歩いたルートでは、山頂付近には道幅の狭い岩場が長く続く。前に進んでも引き返しても、山頂部を抜けるまでには30分以上かかる状況だったという。
「急いで下山しようとしましたが、間もなく土砂降りになり、今度は雷が鳴り始めました。山頂に着いてから15分ほどで、激しい雷雨に見舞われました」
その直後、強烈な光と轟音が太田さんを襲った。
「打たれた瞬間、カメラのフラッシュを一斉にたかれたように、視界が真っ白になりました。『ドゴーン』という音とともに全身の感覚がなくなったんです」
意識はあり、目も見えていたが、首と右手の指先以外は、まったく動かせなかったという。
「動かそうとしても、自分の意思が身体に届かないような感覚でした。寝ている間に腕を身体の下に挟んでしまい、起きたときに腕の感覚がなくなって、力も入らなくなることがあるじゃないですか。あれが一瞬で全身に起きたような感覚です」













