高市ショックには3つの波があった

「骨太の方針」では、AIや半導体など17分野を中心に、2040年度までの官民投資を累計370兆円超とする想定が示された。だが、民間企業が自分の金で行う投資と、政府が税金や国債で行う支出は別物だ。官民を足した巨大な数字は、政府負担を見えにくくする。

市場が見ているのは夢の総額ではない。どの補助金を切るのか。どの基金を廃止するのか。どの外郭団体を整理するのか。社会保障の無駄をどこまで削るのか。その数字である。

高市ショックには3つの波があった。

第1波は2025年10月である。高市氏が自民党総裁選に勝つと、積極財政と金融緩和への期待から株高と円安が進んだ。

だが、公明党が連立離脱を表明すると相場は逆回転し、連休明けの日経平均は1,241円48銭下落した。米中対立や政局不安も重なったが、高市トレードの弱さが露出した。

写真はイメージです
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第2波は2026年1月である。衆院解散と食品の消費税停止が打ち出されると、国債の買い手が細った。税収減は年間5兆円規模と見られた。減税が悪いのではない。同額以上の歳出削減を示さなかったことが悪い。

歳出削減の具体額もなく「財政は大丈夫」と言っても信用ない

2日間で10年国債利回りは0.185%上昇し、20年国債は0.28%上昇した。30年国債と40年国債も約0.4%上がり、40年国債は4%を超えた。市場が警戒したのは、減税そのものより、財源を示さず穴埋めを国債に押し付ける姿勢だった。

第3波が2026年7月である。骨太の方針の原案から、積極財政を続け、日銀の利上げにも慎重だという印象が広がった。7月8日から9日にかけて10年国債利回りは2.88%前後へ上がり、30年国債は4%を超えた。

政府は日銀の自主性を尊重するとの文言を加え、最終案には債務残高対GDP比の安定的低下も盛り込んだ。だが、歳出削減の具体額を示さず、「財政は大丈夫だ」と言葉を重ねても信用は戻らない。

ここで日銀は逃げ場を失う。国債を買い支えれば円安圧力が強まり、輸入物価を押し上げる。利上げをすれば国債利回りが上がり、借換えが進むにつれて政府の利払い費も増える。ガソリン減税で下げた物価を、積極財政と円安が再び押し上げる。

英国では2022年、財源のはっきりしない大規模減税で国債と通貨が急落し、年金基金の国債売却が混乱を増幅した。高市ショックがこの「トラスショック」と比べられるのは、減税したからではない。歳出を削らず、国債で穴を埋めようとしたからだ。