一気に壊れる危機ではないが財政への不信が積み上がっている
日本の崩れ方は英国より遅い。日銀が国債購入を減らす一方、国内投資家は超長期国債を以前ほど買わず、財政への不信が積み上がっている。一気に壊れる危機ではない。少しずつ信用を失う「スローモーションのトラス化」である。
高市政権が今すべきことは明確だ。ガソリン減税を維持し、消費税減税を実行する。同時に、減税額を上回る歳出削減を行う。
補助金をやめ、効果の分からない基金を廃止する。民間企業への個別支援を切り、官民ファンドを整理する。成果の出ない地方創生事業を終わらせ、国と地方の重複事業をなくす。
必要なのは新しい財源でも新しい国債でもない。既存支出を削る政治決断である。
高市政権は半分正しい。ガソリン減税を実行し、消費税減税にも道を開いた。国民の手取りと購買力を増やす方向は正しい。
残り半分は完全に間違っている。減税と同時に政府支出まで増やし、成長すれば借金の重さは薄まると考えている。積極財政は成長政策ではない。政治家と官僚がドブに捨てる金を増やす政策である。
高市ショックの本質は減税ではない。歳出削減のない積極財政だ
しかも、政府支出は単に無駄で終わるとは限らない。国債発行や公的投資が金利や資源価格を押し上げ、民間投資を押しのけるクラウディングアウトを起こす。政府が金を使った分だけ民間の活動が弱まり、経済全体ではマイナスになることさえある。
日本の政治家や経産省、そしてメディアには、特定業種に金を注ぎ込めば、コスパが悪くてもマイナスにはならないという誤解が大きく広がっている。完全な誤りである。
私は高市政権を消極的に評価する。だが、歳出削減を始めなければ減税は長続きしない。国債金利と利払い費が上がれば、政府は財源不足を理由に増税へ戻る。正しい減税を、間違った積極財政が食い潰す。
高市ショックの本質は減税ではない。歳出削減のない積極財政だ。
ガソリン税を下げた判断は正しい。消費税を下げる方向も正しい。足りないものは歳出削減だけである。高市政権に必要なのは、積極財政をさらに進める勇気ではない。積極財政を捨て、政府の仕事と予算を削る勇気である。
文/小倉健一













