見た目の派手さではない「本当に求められる味」
地域おこし協力隊の任期は原則として最長3年。正社員ではなく、限られた時間の中で結果を出さねばならない。試行錯誤の中、東北町の生乳を使った『父と子の生チョコ』を開発。道の駅ですぐ完売する人気商品となった。
「本当は凝縮したミルクのペーストとチョコレートのボンボンショコラ(一口サイズのコーティングチョコ)なんですけど、ココアパウダーを振りかけて生チョコのようなビジュアルに仕上げました。でも材料費が高騰し、値上げをせざるを得なくて。地方では、生チョコに4桁(1000円以上)は厳しい。残念ながら、オワコンとなりました」
と、えむとしさんは苦笑する。都市部で培った高単価・高付加価値の商品設計が、そのまま通用するわけではない。ショートケーキやシュークリームのような誰もが食べたことのあるわかりやすいもの、そして値段が手ごろなものだと肌で感じ取った。その現実は、パティシエとして20年以上活躍してきただけに葛藤もあったはずだ。
「そうですね。厳しい先輩のもとで修業し、言葉もうまく話せないフランスで歯をくいしばった経験があるので。ここでの商品開発は、悔しくても夢を追いかけていた、若き自分を裏切ってしまうことなのかと考えた日もありましたね」
だが、へこんでばかりはいられない。生活がある。えむとしさんは次なる一手として『おがわら湖プリン』を開発。生乳をたっぷり使い、長靴のような形をした小川原湖(東北町)を模した瓶、容器を使用している。
「この瓶(の原価)が高いんですよ(笑)。でもビジネス的に言えば“入り口の商品(フロントエンド)”、これだけで大きな利益を出すというより、“集客装置”になればいいと思っています」
その評判は上々だ。一方で、イベント出店時に「子どもがいるから買わない」という言葉をかけられたこともあったそうだが、えむとしさんはこう解釈している。
「そういった意見もあるよなって。動画を発信していても必ず2つの意見が返ってくるんです。例えば、息子が人生で初めてコーラを飲んだ動画に対して“可愛い”“ほっこりした”っていうのと同時に“コーラがもったいない”“子どもにコーラを飲ませるなんて最低な親だ”とか。
今回のプリンも、思ったことがない、予想していない球は飛んでくるんだろうなと思っていて。でも、その意見は社会あるいは他人の声を耳にできるきっかけにもなるのかなって思っています」
称賛と批判その両方を視野に入れる。引っ張られることなく、あくまでふたりの道を進むための材料として。













