アメリカでは「農家は儲けすぎている」と批判がある
西欧では田舎と都市部の役割の違いを国民が認識している。「都市部を支える田舎を守る」という共通認識や、「交換価値の低さを税金で埋めるのが公平だ」といった国民的合意がある。
残念ながら、私たちの社会にそのような国民的合意は存在しない。あるのは「悲惨だから救う」「困っているから助ける」という上から目線の共通認識だ。
農業経済学者の鈴木宣弘〔2021〕によれば、スイスの農業所得に占める補助金の割合はほぼ100%である。イギリスやフランスは約90%で、ドイツは約80%だ。その年の収穫量によって約10%の上下はあるが、農家は「みなし公務員」のような手厚い保護を受けている。
また、アメリカの農家における補助金の割合は日本と同じ約30%である。ただし、アメリカは株式会社化した大規模経営が主だ。地平線の彼方まで農地が続き、大型の農業機械が行き交う。
広大な土地を少人数で管理し、自然環境に適した作物を大量生産している。各方面から「農家は儲けすぎている」といった批判がされるくらいだ。
日本の農家はアメリカのような広大な農地や牧場を持たず、西欧諸国のような補助金の支給もない。過疎地域はその状況の中で、役に立たない補助金事業に依存するしかなかった。有益な補助金の使い道が他にある筈なのに、それを行えなかった。
農業は伝統文化の継承や無形文化の存続のためにあるのでは決してない。ましてや政治家や官僚のためにあるのでもない。農業は食料生産者と食料を求める消費者のためにある。私たちは今一度、補助金の有効な使い道について考え直す必要があるのではないか。
写真はすべてイメージです 写真/shutterstock
 
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                         
                        





 
  
 




















