世代の役割文化
二つ目は、世代の役割文化だ。農耕は地域に定住して変化のない日常を求める。そこでは「昔ながら」をよく知る高齢者が重宝される。
若者は高齢者から種まきや田植え、収穫時期等の知恵と工夫を教わる。高齢者は地域の歴史的背景や人間関係もよく知っている。
おのずと年功序列の枠組みがつくられて、「地域のことは高齢者に任せておけばよい」といった考えが若者の側にある。高齢者の側も地域を担うことを望んでいる。つまり、変化が乏しい地域であるほど高齢者が重要な役割を担う。
日本社会において役割は重要な意味を持つ。どのような組織に所属して、どのような役割を担っているかが、その人の価値になる。
私たちは相手の役割の違いで自らの立ち位置を変えるし、それができない者は社会人失格の烙印を押される。そのため、所属組織での役割を失うと扱いがとたんに軽くなる。だからこそ、高齢者は亡くなるその日まで手に入れた役割を保とうとする。
それでも都市部では、若者が「その役割を私たちに譲ってください」と高齢者に言うくらいはできる。なぜなら、他にやることを幾らでも探せるからだ。ところが、過疎地域の高齢者は他にやることを探すのが難しい。それを知りながら役割を譲ってもらうのが心苦しいのである。













