新作映画に感じた「運命じみたもの」
杉咲花が主演を務める映画『ミーツ・ザ・ワールド』が10月24日に公開される。本作の原作は、芥川賞作家・金原ひとみさんが第35回柴田錬三郎賞を受賞した小説。本プロジェクトが始動したのは3年前だったというが、本作との出会いに杉咲は運命を感じたという。
――本作への出演を決めた際のお気持ちをうかがえますか。
杉咲花(以下、同) 原作に対する敬意であったり、どんな思いでこの映画を作りたいのか、その温度がすごく伝わってくるような熱量の高いプロットをいただいたんです。
しかも、監督は松居大悟さん、プロデューサーは白石裕菜さんと深瀬和美さんと、皆さんそれぞれ別の作品でご一緒したことがあり、いつかまたご一緒したいなと、心から信頼しているスタッフの方だったので、「もう飛び込むしかない」という気持ちでした。
原作も心から素敵で、のめり込みました。私はあまり文学に多く触れてきた方ではないのですが、初めてしっかり読んだ小説が金原先生の『蛇にピアス』(2004年)でして、金原先生原作の作品に関われることも運命めいたものを感じました。
金原作品といえば、“生きづらさ”を抱えた登場人物を鋭い表現で描くことで、多くの人を惹きつけている。杉咲は金原作品にどのような印象を持っているのだろうか。
――金原さんの作品については、どういった印象を持っていますか。
本当に直視しがたいような、人間の奥底に人知れず溜まっていた澱のようなものがドロっと出てくる。でもそこから目を背けられないのは、自分自身もその感覚を知っている部分があるからなんだろうなと思います。
多様な人物が描かれているなかで、前から知っていたような手触りのなにかが描かれていることにドキッとするような、そんな作家さんだと思います。
――小説『ミーツ・ザ・ワールド』の印象をお聞かせください。
まず登場人物それぞれの人物造形がすごく個性的ですよね。みんな、カラッとしていて。それぞれの“好きなもの”を否定しないところも優しくて、素敵だなと思いました。
それから読み心地というか、金原先生ならではの独特な言葉の羅列、リズム、自分の辞書にない表現がたくさん出てくるのも、すごく豊かでした。