「バイク倶楽部の巻」(ジャンプ・コミックス第12巻収録)

今回は、時限爆弾を仕掛けられた自動車が盗難に遭い、市中での爆発を阻止するために両さんたちがバイクで追う……という大追跡劇をお届けする。

本作が描かれたのは、『こち亀』の連載は始まった翌年の1977年。

1970年代は、自動車やバイクを集団で駆って暴走行為をしたり、グループ同士の抗争を繰り広げたりする、いわゆる「暴走族」の存在と活動が社会問題化した時期だった。週末には数千台の自動車&バイクが集結し、危険行為を繰り広げるような現象も目につき、警察はその対応に追われていた。

だが交通規制による対応ではまるで埒があかず、1978年には「共同危険行為等禁止規定」を設けた道路交通法改正が行われた。それでも1980年代まで、暴走族たちの活動は社会を騒がせ続けていた。

さて、本作における両さんたちはそろってバイクをすっ飛ばし、時限爆弾を積んだ自動車を追うのだが、彼らのスタイルは暴走族のそれを模したわけではない。

群れて脱法行為・迷惑行為を行うことで承認欲求を満たす暴走族とは異なり、公道で運転テクニックを披露し競い合う「街道レーサー」「走り屋」に近いといえるだろう。とはいえ、いずれにしても、バイクが若者のあり余るパワーと衝動を満たすためのツールだった時代ならではの行動ではある。

なお本作に登場している白バイ警官の「冬本」は、おなじみの「本田」より以前に登場していた準レギュラーキャラクターだ。ハーレーダビッドソンをアメリカンパトロール風の格好で乗り回してる。大型バイクを抜群のテクニックで乗りこなすワイルド系警官というキャラ造形は、そのまま本田に受け継がれている。

ちなみに本田には、暴走族の総長を務めていた男が警察官になったという設定があるのをご存じだろうか。

ヤンキー上がりの警察官の存在は、なかば都市伝説のように語られることが多いが、我らが両さんもその口だ。地元では有名な暴れん坊で中学・高校時代は警察のやっかいになることも多く、犯罪者の誕生を防ぐべく警察官にさせられたのだ。

「両さんメモリアル」(ジャンプ・コミックス第69巻収録)より
「両さんメモリアル」(ジャンプ・コミックス第69巻収録)より

それでは次のページから、爆弾を積んだ暴走車と大型バイク軍団との追跡劇をお楽しみください!!