受刑者らは「お菓子が食べたい」と発言

法廷の奥のドアから職員に連れられ入廷してきた紺色ジャージ姿の被告。

細身で不安そうなその表情は、刑務官だったとは想像もつかない印象を受ける。そして、両手には黒色の手錠がかけられていた。

起訴状によると、被告は、受刑者A(贈賄罪で起訴・25歳)に対して、刑務所内での所持・使用が禁止された物品を渡す見返りに、2回に分けて、Aは第三者を経由して計18万5000円を被告名義の口座に現金を入金させた。

さらに、受刑者B(贈賄罪で起訴・31歳)に対しても同様に便宜を図る見返りに、2回に分けて、第三者を経由し計15万円を被告人名義の口座に入金させたとされている。

検察官の冒頭陳述によると、事件の詳細はこうだ。

被告は、専門学校を卒業した後、盛岡少年刑務所で刑務官として勤務。2022年4月、刑務所内で受刑者の監視や作業工場での指導・監督などを行う「処遇部門」に配属されていた。

盛岡地方裁判所(2025年1月31日、筆者撮影)
盛岡地方裁判所(2025年1月31日、筆者撮影)
すべての画像を見る

同年8月、Aは被告が担当している工場の「衛生係」になった。その後、被告は、Aと趣味が同じことなどから、よく話をする仲になる。

その会話のなかで、Aは「お菓子が食べたい」と発言。そして2023年8月ころ、被告はAにお菓子を渡すようになった。

Aからは謝礼として、2023年11月と2024年1月の2回に分けて、同房の人物を経由し、被告の指定した住所に現金を送付させ、第三者を経由して被告の口座に計18万5000円を入金させた。

一方で、Bは被告が監視を担当していた工場の工場長を務めていた。2023年9月下旬、Bは被告と会話するようになる。

そんななか、Bも被告との会話で「甘いものが食べたい」と発言。被告は、過去にBが仕事上のミスをフォローしてくれた恩があることなどから、お菓子などをあげるようになる。

その後、Bから「お礼をしたい」と言われ、被告は刑務所内で所持・使用が禁止されている物品を渡す見返りに現金を受け取るようになったという。

Bは実母などの第三者に対して、被告の口座に入金するように依頼する旨の手紙を送り、2回に分けて計15万円を入金させた。

検察官が提出した証拠によると、被告はAに対して、チーズ蒸しパンやカルピス、タバコ、ライターなどの禁止物品を。Bに対しては、粉末コーヒーや唐辛子、石鹸、無修正のアダルト写真などの便宜を図ったという。