昭和100年の節目に開催される万博について思うこと
大阪・関西万博から依頼がきたのは、パラリンピック後ということだが、あとで関係者から話を聞くと、パラリンピック以前から小橋氏の名前が上がっていたという。「催事企画プロデュース」とは具体的にどんなことをするのだろうか?
「万博は184日間の開催期間中にたくさんのイベントがあります。開会式、閉会式、主催者の主催者催事、一般企業や団体の一般参加催事、その他、各国がやるイベントもあって。
僕の役割の一つは、たくさんのイベントの企画を集めるということ。そして、開会式等の公式催事や主催者催事等をプロデュースしていくことです。
建築プロデューサー、運営プロデューサー、その他各パビリオンのプロデューサーもいらっしゃるなかで、僕の担当はイベントのプロデューサーという形です」
大阪・関西万博は、開催決定直後から「公費のムダづかい」という批判が起き、最近でも前売り入場券が目標の半数強どまりであることがニュースで取り沙汰され、一部では「失敗確定」などと揶揄されている。小橋氏はこうした声をどう受け止めているのだろう。
「もちろんいろいろなご意見は受け止めつつも、1人でつくってるイベントではないので、それに対してなにか言うのは僕の役割ではないと思っていて、与えられた環境の中でなにができるのか必死に鋭意努力することなんだと思います。
ただ、こういう博覧会って体験しないと理解はしづらいだろうとは思います。例えば高度成長期で物に憧れたがあった時代の『月の石』と今の時代では価値も変わってしまう。
さらに、1970年万博のときはテーマが『進歩と調和』でしたけど、今回のテーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』でいのちというのは可視化しにくいし、共通に理解するのは簡単ではないんだと思うんです。
けれども、実際に体験した人が感動したり、そこでなにかを感じて他の人にシェアして繋がったりして、それが輪になっていくような、後からどんどん『いのち輝く未来社会のデザイン』が伝わって大きくなっていくじゃないかと思ってるんですよ」
一旦の沈黙があったあと、こう付け加えた。
「1970年の大阪万博のときも事前にはひどいことを言われいてたとも聞きますし、パリ万博のときも完成したエッフェル塔を見て 『アグリー(見苦しい)』と貶す人たちもいたらしいので、既存の固定概念のなかではなかなか全てを理解してもらうのは難しいんでしょうね」
セカンドキャリアが順風満帆に見える小橋氏だが、目標は会社を大きくすることでなく、「自分の人生を生きるきっかけになるような出会い、刺激の空間を作ること」だという。
「万博に関しては批判もいろいろあるけど、僕はいつの時代でも全てのことに意味があると思うし、体験しないよりは体験した方が絶対いいので、1つの場所で世界一周ができるような、新しい価値観に出会える機会を僕は作りたい。
偶然か必然か、今年は昭和から数えると100年目なんですよね。日本にとって昭和から今に至るまでの100年ってすごく大きかったと思います。お湯は100度で沸騰するとゼロになりますが、まさにいろんなものがゼロになるようなタイミングの今、万博が開催されるのは、なんか意味があるんじゃないかなと思ってます」
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取材・文/高田秀之 写真/本人提供