キャリアハイとカモッラとの蜜月

私生活の憂さをパーティで晴らすマラドーナ、そのなかによくない人間が含まれていた。カモッラの関係者たちである。

カモッラはイタリア四大マフィアのひとつで、常時6000人の構成員を抱えるともいわれる犯罪者グループだ。ナポリを拠点とし、麻薬売買・殺人・武器の密輸・売春斡旋・恐喝など、なんでもござれ。その一方でごみ処理ビジネスにも進出し、長年の課題であった町の悪臭を改善。多くの雇用も創出するなどナポリにおける影響力は絶大だ。

美しいナポリの街並み
美しいナポリの街並み

コカインの使用疑惑が取り沙汰されていたが、マラドーナはカモッラとの関係を否定。また、度重なる負傷でピッチから遠ざかったり、監督との確執なども報じられていたが、89/90シーズンには再びナポリをセリエA優勝に導くなど、1990年までは選手として一定の評価を受けていた。

だが、91年以降はドラッグなどで荒んだ生活が、いよいよ彼のキャリアに暗い影を落としていく。

91年3月にはドーピング検査の結果コカインが検出され、15ヶ月の出場停止処分を受けた。またマフィア関係者のパーティに出席していた映像が出回るなど言い逃れができない状況が続く。ちなみにJリーグ発足前の名古屋グランパスエイトへの移籍も計画されていたというが、コカイン使用疑惑によって立ち消えたという。

よくない噂もありながら、スペインや母国アルゼンチンのリーグで現役を続けていたマラドーナ。

96年8月にはスイスの病院で薬物依存症の治療を受けるも、翌97年8月の検査でまたしてもコカイン検出。二か月後、自身の誕生日である10月30日に37歳で現役を引退した。

現役を退いた後もドラッグを断ち切れず、2000年1月に不整脈と高血圧、04年4月には拡張型心筋症で搬送。05年5月に胃のバイパス手術を受けるなど、体調は安定することがなかった。

そんな中2008年にアルゼンチン代表監督に就任。ワールドカップではチームをベスト8に導くことになる。表舞台に帰ってきたマラドーナは10年に代表監督を退任してからも、クラブチームの監督を歴任、15年には30歳年下の恋人のために54歳で美容整形を受け世界を騒がせたりもした。

また、解説者として参加した18年のロシア・ワールドカップでも一挙手一投足が話題になるなど、ドラッグでそのキャリアを汚しながらも世界からは愛され続けていた。

ロシアワールドカップを観戦するマラドーナ氏 このときも病院に担ぎ込まれた
ロシアワールドカップを観戦するマラドーナ氏 このときも病院に担ぎ込まれた