利用者・エージェント・企業で三つ巴の化かし合い

「転職エージェントは、利用者を企業に入社させると年収の何割かを企業側から得るビジネスモデルなので、利用者の意向を無視してちょっとでもバックの高いところにあてがおうとする業者もいます。

悪徳に近い会社もあって、ノルマがすごいんですよ。例えば月に200万のノルマを与えられて、達成するためには月2件の転職をさせなきゃいけないとします。でも、20人面談しても2件決まらないこともありますし、そうなると無理やり決めるようなことになってしまう。

(写真はイメージ)
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KPI(重要業績評価指標)を追いまくってるような会社だと、『とにかく応募数を増やせ!』『書類通過率は20パーだから、とりあえず20社出せば1次面接に4社行くから20社応募させろ』『売上のためにそういう人を何人も作れ』みたいなところは結構多いです。

でも、それって利用者から見たらすごく微妙なサービスですよね。売上至上主義じゃなくて、個人の人生をちゃんと考えてそれに寄り添うエージェントが増えたら、『相談しても無駄』『あいつら自分のことしか考えてない』みたいな業界へのヘイトも減るのでは」(Aさん)

しかし、利用者側にもエージェントを悩ませる人は多い。今や、転職業界は三つ巴の“化かし合い”に入っているという。

「利用者にもめちゃくちゃ経歴を盛ってる人とかいて(笑)。前職の年収とかほぼ確認されないので、500万って言ったら500万になっちゃう。だからその人を本当に500万で雇っていいのか、という目利きはすごく大事です。

 全体的に嘘が多いと思いますね。企業側もブラックな条件を隠したり、不採用にしたことにして実は採ってるみたいなこともあります。エージェント側も『めっちゃいいよこの求人』とか嘘ついたり。ある種、お互い様というか、情報戦で化かし合ってるというか。

(写真はイメージです) photoACより
(写真はイメージです) photoACより
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就活だと、学生がガクチカ(「学生時代に力を入れたこと」という質問項目)で盛ったことを話して、企業側もブラックな条件を曖昧に隠したりして騙し合ったりしてるじゃないですか? 転職だと、そこにエージェントも加わって、三つ巴のさらに高度な情報戦になるっていう」
離職率が高いほど、転職エージェントにとってビジネスチャンスであることは間違いない。しかし、その裏ではさまざまな攻防が繰り広げられているようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班