和牛への冒涜
この値段を米ドルに換算すると約4ドル60セント(1ドル=150円)。アメリカで売られるビッグマックは5ドル15セントだ。この黒毛和牛バーガーがいかに破格かわかるだろう。為替や物価の違いはあるにせよ、こんな激安で販売するなど、もはや和牛への冒涜である。
少しでも安く提供してたくさんの人に喜んでほしい。もちろんモスバーガーにはそんな思いがあったのだろう。でもこの価格破壊は和牛の価値を損なうものだ。真剣に和牛ブランドを高めようとする関係者にとって大きな迷惑でしかない。
和牛にかぎった話ではない。日本は自国の食文化をないがしろにしがちだ。和食料理にしてもそうだ。和食は世界でもっとも洗練された料理である。出汁や塩を用いた繊細きわまる味つけはもはや芸術だろう。
しかし世界的な和食ブームのなか、外国資本による〝なんちゃって和食〟が各国いたる場所ではびこっている。とても和食とは呼べない代物が自称・和食レストランで供されているのだ。しかもその大半は高級店である。
このまま野放しにしておけば、和食に対するイメージは悪くなる一方だ。とても歯がゆい。