「白鳥の迷ドライバー宣言!の巻」(ジャンプ・コミックス89巻収録)

今回は、金持ちぶりをひけらかす軽薄男、白鳥麗次が登場する話をお届けする。

麗次は、1989年に描かれた「麗子メモリアル」(ジャンプ・コミックス69巻収録)で初登場したキャラクターで、白鳥鉄工所社長の息子だ。

「スーパー金持ち」を自称して身の程知らずにも麗子に迫るが、世界指折りの富裕層の一員である麗子とはレベルが違う存在なのは、いうまでもない。

そして登場するたびに父親の会社が傾いたり倒産したりして、エピソードのオチでは「スーパー貧乏」になることもしばしばだ。

ちなみに1994年に描かれた本作では、父親の会社は液晶製造に乗り出した特需で大いに潤っているようだ。

麗次が初登場した1989年、日本はバブル景気まっさかりで、当時の流行語でいうなら「イケイケ」の状態。

工業国の基幹産業である鉄鋼業も1970年代から成長を続けていて、世界1位の生産量を誇った時期もあった。

ところが1990年代以降は中国の急成長に押されて、鉄鋼業は縮小ぎみに。だが一方で、液晶産業では世界で圧倒的なシェアがあり、1997年には世界市場の8割を日本が独占していた。

ところが2000年代半ばには、わずか1割にまで落ち込んだ。

こうして見てみると、麗次の父親の会社の浮き沈みは、日本の産業のそれとバッチリ重なっていることがわかる。

そして2000年代になると日本の産業の衰退にともない、麗次登場の機会も減っていった。麗次は、日本の景気を漫画的に映し出すキャラクターだったのかもしれない。

「続・白鳥麗次再登場!の巻」(ジャンプ・コミックス73巻収録)より。成金ぶりを発揮して、紙幣をばらまきながら登場していた時期も(ただしカラーコピーの偽物!)
「続・白鳥麗次再登場!の巻」(ジャンプ・コミックス73巻収録)より。成金ぶりを発揮して、紙幣をばらまきながら登場していた時期も(ただしカラーコピーの偽物!)

それでは次のページから、『こち亀』きっての「小金持ち」キャラ、白鳥麗次が繰り広げる騒動をお楽しみください!!