Aさんは公益通報者としての保護を求めたが…
県中枢は7月下旬から大混乱に陥っている。
「片山安孝副知事は7月末に辞職しました。さらに県ナンバー4の小橋浩一理事が体調不良だとして降格を願い出て認められました。
これに加え、片山氏退任後に最も力を持つとみられていた井ノ本知明総務部長も体調不良を理由に出勤しなくなりました。いずれも“4人組”、“牛タン倶楽部”と言われた知事側近グループです」(県関係者)
8月2日午前には、Aさんの告発文書に書かれた7つの疑惑を調べる県議会調査委員会(百条委)が開かれた。そこで県職員を対象に7月31日に情報提供を求めるアンケートを開始したところわずか2日間で3500件超の回答が寄せられたことが報告された。
「新たな疑惑の告発がある可能性もあり、調査範囲はさらに拡大するでしょう」と県議の一人は話す。百条委ではAさんへの県の懲戒が妥当だったのかも問われることが確実視されているが、そこで解明の足掛かりになる文書の存在が今回明らかになった。
その前に一連の騒動を振り返る。
3月12日にAさんが作成した告発文書では、斎藤知事や4人組によるパワハラやたかり疑惑のほかに、昨秋のプロ野球阪神・オリックスの優勝パレードの費用を捻出するため県が信用金庫に補助金を増額し、それをキックバックで寄付させたなどとする深刻な疑惑も書かれていた。
3月25日に片山副知事らがAさんからパソコンを取り上げ、中から告発文書のデータを発見。2日後の27日、斎藤知事が会見で文書は「嘘八百」だと言い放つ。
知事のパワハラや、“牛タン倶楽部”の一員である原田剛治・産業労働部長が企業から商品の供与を受けた不正が徐々に明るみに出て、Aさんの行動が内部告発であることが今でははっきりしている。
だが斎藤知事は3月27日の会見で「ありもしないことを縷々(るる)並べたような内容を作ったっていうことを(Aさん)本人も認めてますから」と発言。Aさんが嘘を書いたと認めたかのような印象操作を行なった上、Aさんは「不満」を抱えて文書を書いたのだと、動機をでっち上げてメディアに広報していた。(♯4)
これを聞いたAさんは公益通報者としての保護を求め、4月4日に県の通報窓口で手続きを取っている。
しかし、県人事課は、Aさんらから聴き取りを行なった上で、5月2日の綱紀委員会の議論を受け、停職3ヶ月にするとの「決裁書・報告書」を作成。斎藤知事が承認し、処分は5月7日に記者会見で発表された。そしてAさんは7月7日に自死した。