「いつの間にか勉強になってしまっている」
ではここからは岡村氏に話を聞いていこう。教育版の話が持ち上がったのは、2019年ころだったという。
「立命館小学校の正頭英和先生から『桃鉄を教育の現場に活用させてもらえないか』と声をかけてもらったことがきっかけでした。難読地名を子どもたちに教える際、暗記させようとすると普通は上手くいきませんが、ゲームをやりながらだと必死に覚えようとして、結果的に地理や歴史に対しての理解度が深まる。そうした考えのもと、具体的な制作が進みまして、2022年の『東京ゲームショウ』で発表、2023年初頭から提供を開始したのです」
学校や学生からの反響はどうなっているのか?
「やはりプレイしていて気づかないうちに、地名を覚えていたという話はよく聞きます。テレビやYouTubeなどで何となく知った場所を桃鉄で発見し、すとんと腑に落ちているのかもしれません。小学校低学年向けにフリガナを付けたバージョンも提供していますので、ふっと何かで難読地名が出てきたときでも難なく読めるでしょうね。
なお教育版は管理ツールを実装しており、中断や再開などを先生側がコントロールできるようになっています。学習のタイミングに合わせて制御可能なので、授業しやすい仕組みになっていると評判です」
学びのためになる一方で、こんな効果もあったそうだ。
「4月のクラス全体がまだ馴染んでいないときに、桃鉄をプレイしてお互いの親睦を深めあうといった使い方をしたという声をいただいています。また教育版をきっかけに学校に来るようになったという生徒さんもいらっしゃいました。コミュニケーションツールとしても機能しているようで、桃鉄ならではの現象だと感じました」