「最後に福寿の話ができてよかったです」

――若い女性に特に優しいのもまた小林さんらしいですよね。卓球さんは最近ではどういう時に食べに行かれてたんですか?

あの味が無性に食べたくなる時もあるんだけど、「小林さんどうしてるかな」っていうのもあって(笑)。様子を見に行くっていう。瀧とか、マネージャーとかと車乗ってる時に「福寿」の話になって、話をしてると食べたくなってくるんですよね。

「じゃあ、今から行ってみよう」っていうのもよくあったし、「今日は火曜日だから休みか、じゃあ明日行ってみよう」とか。で、行くと閉まってたりするんだけど。「福寿」と三軒茶屋の「レコードショップFUJIYAMA」は俺の中でけっこう近いものがあって。気まぐれな営業時間も含めてね。

――卓球さんから「福寿」の話を伺えて本当に嬉しかったです。

瀧と一緒に『福寿』に行って取材を受けたりしたことはあったんですけど、閉まるにあたってこうやって話ができてよかったです。

――ありがとうございました!

「福寿」と店主・小林さんへの愛に溢れた石野さんのお話を聞き終えた帰り、無性にあのラーメンが食べたくなった。

閉店について小林さんにLINEでたずねた時、私は「また福寿のラーメンが食べたかったです!」とすごく野暮なことを言ってしまった。するとしばらくして小林さんから「実は僕も食べたいんです」という返事が来た。その優しく柔らかな返事に救われるとともに、いかにも小林さんらしいギャグで、つくづく最高だなと思った。

そう、店主の小林さんだってまた食べたい気持ちはやまやまなのだ。石野さんが言っていたとおり、これまでに何度もあのラーメンを食べられただけでじゅうぶん幸せだったと思うことにした私は、「憧れの石野さんに会えました!」と小林さんに早くLINEで報告したくてたまらなくなった。

#1 「外食は福寿しかなかった」電気グルーヴ・石野卓球が惜しむ老舗ラーメン店の閉店はこちらから

取材・文・撮影/スズキナオ インタビュー撮影/高木陽春