桐生に100メートルで勝った男
続いて3人目の島田海史(入団5年目、26歳)はどうか?
島田は中学時代、野球部所属ながらジュニアオリンピックの100メートル走に出場、一緒に走った日本人初の9秒台ランナー、桐生祥秀選手に勝った男として知られる。
湯浅が第2の藤川球児、長坂が第2の矢野燿大(現監督)とするなら、韋駄天・島田はさしずめ、第2の赤星憲広としてその将来を嘱望されていると言ってもよいだろう。
阪神では、18年にドラフト1位で入団して以来、不動の1番センターとして活躍する近本の起用法がひとつの悩みになってきた。虎番デスクが解説する。
「今季、阪神が開幕から連戦連敗したのは得点力不足が原因。貧打解消のためにはチーム一の打力を誇る1番の近本をクリーンナップに置きたいが、そうすると今度はリードオフマンがいなくなる。そのため近本に変わる1番打者を育成することがチームの課題だったのですが、その穴を見事に埋めつつあるのが島田なんです」
島田は昨年、57試合に出場して打率は.243。今季も4月に矢野監督が島田1番、近本3番の打順を試すも島田は無安打と鳴かず飛ばすに終わっていた。ところが、2度目の1番先発となる6月1日の西武戦で島田は3安打と大爆発。チームを勝利に導いた。
「以降、島田の1番起用が続いています。島田、中野の俊足トリオが出塁し、3番近本から4番佐藤輝、5番大山、そして6番糸原までの破壊力のある打順が組めるようになったんです」(前同)
たしかに島田が1番に定着する以前の5月、阪神の一試合あたりの得点はわずか2.625点(リーグ最下位)にすぎなかった。それが6月に入って1番島田、3番の近本のオーダーが固定されると、いきなり5.5点と倍増し、チームも6連勝を飾っている。
島田は盗塁王5回の実績を持つ阪神のスターだった赤星と同じ背番号53、守備位置も同じセンターだ。このまま1番に定着すれば、赤星2世の声も出てくるはずだ。
昨季パ・リーグを制したオリックスも交流戦優勝で勢いに乗り、見事、25年ぶりのリーグ優勝を遂げた。ドラフト下位3人組の活躍で交流戦優勝となれば、阪神にも奇跡が起きたっておかしくない。
写真/小池義弘