強肩・好リードの「ポスト矢野」

ふたり目の立役者は捕手の長坂拳弥(入団6年目、28歳)。

ドラフト7位で阪神に入団した長坂は、矢野監督と同じ東北福祉大野球部の出身。強肩、好リードが光るだけでなく、人望があり、高校、大学では主将も務めた。そんな長坂に球団は、矢野監督が現役時代につけていた背番号39を与え、期待をかけてきた。

ただ、阪神には2年連続ゴールデンクラブ賞の梅野、チームキャプテンを任される坂本という2人の強力な捕手がいる。そのため、長坂はその実力を認められながらもチーム内では捕手3番手の地位に甘んじ、1軍出場もままならない時期が長く続いた。前出の虎番記者もこう苦笑する。

「1軍に上がれないから、いつまでも経って目立たない。この数年間で長坂が注目されたのは藤浪らといっしょに会食してコロナに感染したというニュースが流れた時くらい(笑)。背番号もいつしか39から57に変わってしまいました」

転機が訪れたのは今シーズンの5月下旬のことだった。正捕手の梅野がケガで登録抹消となり、2軍の正捕手だった長坂が1軍に召集されると、5月21日の対巨人戦では初のスタメンマスクに起用。先発のウィルカーソンを巧みにリードし、チームを2ー1の勝利へと導いたのだ。

逆襲のタイガース。6月攻勢の立役者はポスト「藤川・矢野・赤星」_b

しかも、その後も長坂の活躍は続き、6月5日の日ハム戦までのスタメンマスクをかぶった計8試合で6勝2敗(勝率7割5分)。「長坂がスタメン出場すると負けない」とまでささやかれるように。

「背番号39は阪神が03年、05年にリーグ優勝した時に矢野監督がつけるなど、球団にとっては重要な背番号です。今は2年目の栄田裕貴(立命館大・捕手)がつけていますが、このまま活躍が続けば、長坂がとり返すことになるかもしれません」(前出・虎番記者)