刑務所見学で感じた塀の中のリアル

−−これまで先生が行った刑務所や拘置所で、特に印象的だったところはどこですか?

あまりたくさんの場所に行けているわけではありませんが、ある地方刑務所の見学会では、価値観が大きく変わりました。見学会で刑務所の中に入れるといっても、当然受刑者の人には会えません。でも、廊下を歩いていると奥のほうからラジオやテレビの音、話し声が聞こえてきたことがあるんです。
そのときまでは正直、“塀の中にいる人”をどこか遠い世界の存在、言ってしまえば現実的なものとしてイメージできていなかったのですが、急にリアリティを感じました。本当にいるんだ…と。

−−非常に興味深いのですが、もし機会があるとしたら、先生はほかの人にも見学会への参加をおすすめしますか?

機会があるならぜひ行ったほうがいいと思います。受刑者と、そこで働く刑務官の存在を知るだけでも、生きる上での考え方が大きく変わるはずです。犯罪を犯して入るのはよくないですしね(笑)。

−−テーマ的にかなりハードな内容も含まれる本作ですが、漫画として読者に読んでもらうために意識していることはありますか?

犯罪が絡むので、どうしてもつらかったり重かったりするのは避けられません。ただ、読者を暗い気持ちにしたり、気持ち悪くしたりしたいわけではないので、スッと入ってくるように、絵柄を明るめにするなど工夫はしています。あとは、人が亡くなるシーンなど、センシティブなところはなるべく直接描写しないこととかです。