不開示理由が虚偽である3つの理由

この不開示理由が虚偽である具体的な根拠を、筆者は少なくとも3点挙げられる。

【①総理の国会答弁】
実はこの不開示決定のわずか3年半前、安倍晋三首相(当時)は首相会見前の質問事前提出を国会で認めてしまっている。以下、その質疑を抜粋する。

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【蓮舫 議員】(2020年2月29日の首相会見で)最後に記者との質疑をやり取りされた時、総理は答弁原稿を読んでいるように見えたんですが、事前に記者クラブの幹事社を通じて質問内容を確認しているんですか。
【安倍晋三 総理】まず幹事社の方が質問されますので、その場合、詳細な答えができるように通告を頂いているところもございます。また外国プレスの場合はいくつかの可能性を示して頂くこともあるわけですが、必ずしもそれに限られるものではない。
【蓮舫 議員】フリーランスの記者からの通告も受けていますか。
【安倍晋三 総理】総理の記者会見においては、これは恐らく取りまとめを広報室で行ってますので、私も承知は・・。詳細については今ここでお答えすることはできない。
出典:参議院 予算委員会 2020年3月2日
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この質疑で安倍首相(当時)は主に以下3点を暗に認めている。

・幹事社は質問を事前提出していること
・外国プレスも質問を事前提出する場合があること
・事前提出された質問の取りまとめは広報室(=内閣広報室)が行っている(はずである)こと


これら3点はいずれも今回の不存在を理由とする不開示決定とことごとく矛盾している。この3年半の間に運用が変わった可能性もあるが、現在の岸田首相も事前に用意した原稿で回答を済ませる姿は同じため、その可能性は限りなく低い。

歯切れの悪い岸田首相会見に台本はあるのか…「首相会見の質問事前提出」開示要求に「不存在」と隠す官邸と記者クラブ_2

【②元総理番記者の証言】
筆者は第2次安倍政権時代の総理番記者から匿名を条件に具体的な証言を得ており、大手テレビ局、新聞社で構成される内閣記者会常勤幹事社19社が粛々と「業務」として質問を取りまとめて質問内容の事前調整まで行っていた実態を業務フローが描けるほど詳細に把握している。

(例)質問が重なった場合は会社間で事前に調整する、事前に示された質問に対して官邸が変更を助言することもある、等

つまり、質問を事前提出していただけの話ではない。いわゆる「台本」を内閣記者会と官邸が緊密に協力して作り上げていたと表現しても差し支えないかもしれない。

(*証言の詳細は、筆者のtheLetter「【独自】元 総理番が明かす、首相会見の質問事前提出「業務」のウラ側」(2023年1月3日)参照)

*内閣記者会常勤幹事社19社の内訳(五十音順):朝日新聞、NHK、共同通信、京都新聞、産経新聞、時事通信、JapanTimes、中国新聞、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、東京新聞、西日本新聞、日経新聞、日本テレビ、フジテレビ、北海道新聞、毎日新聞、読売新聞