「お前が嶋大輔か!」「表出ろや!」
嶋大輔との喧嘩で失ったもの
――もともと嶋大輔さんのファンだったんですよね。
大好きでした。なのに当時の俺はバカだったので、緊張もあったのかな、ディスコのVIPルームにいる嶋大輔を見て興奮しちゃって。握手してもらうつもりが「お前が嶋大輔か!」「表出ろや!」って声かけちゃったんです。
――思いっきり喧嘩売ってるじゃないですか。
そうですよね。案の定、殴り合いの喧嘩になりました。もつれたときに肘が当たって俺の前歯が飛んだんですよ。それで「拾えや!」って言ったら、拾ってくれました。後輩にアロンアルファを買いに行かせて、とりあえずくっ付けて。
よくあることですが、喧嘩すると仲良くなるんですよ。それでちょくちょく連絡をとるようになり、やがて嶋大輔の所属する事務所の社長を紹介されて、芸能人になりました。当時28歳でしたから、だいぶ遅いデビューです。
――デビュー当時の写真を見ると、爽やかな二枚目路線ですよね。
芸能人としてのプロフィールを作るときに、当時の事務所の社長から「全部話せ」って言われたんです。それで東京に来てから初めて自分のすべてを話しました。話を聞いてわかってくれた社長は、「本名はやめとこ」と言って「たかちのぼる」という芸名を考えてくれました。
今と比べても、事務所の力がものすごく強かった時代ですからね。いいドラマにキャスティングされるのも、演技力がどうとかではなく、事務所のプッシュがあるおかげ。
でも俺にとってはそれがすごく心地よかったんです。芸名を付ければ本名も出さないで済むし、役者は自分ではない人間を演じられる。ヤクザの息子であることも、地元の高知で暴れまくっていたことも、東京でグレーな商売をしていたことも関係ない。芸能界の仕事が性に合ったのは、素の自分ではなく、飾った自分で勝負できるから。
テレビに出させてもらうようになってからは、トーク番組とかで地元の友だちに声がかかったりするんですよ。本当はサプライズで登場する段取りなのに、事前にその友だちから電話がかかって来て、「テレビの人から昔のエピソードを話してほしいって言われたんだけど、どこまで話していいんだ?」って。
――大丸デパートでの大騒動は話せないですもんね。
話せるわけないですよ。
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取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/高木陽春