「からかい」「スキンシップ」なのか?

しかし男性の場合はどうでしょう。このような状況になった場合、それは「性暴力」と捉えられるでしょうか。「いじめ」だと思う人もいるかもしれませんが、「からかい」や「スキンシップ」と思う人も少なくないのではないでしょうか。

ここに興味深い調査があります(岩崎直子「男児/男性の受ける性的行為に関する意識調査」「小児の精神と神経」49巻4号, , 2009年, 347~354頁)。いくつかの性的行為を示し、男性から女性に、あるいは男性から男性に、という具合に行為者(やる側)と被行為者(される側)の性別を男女の組み合わせで考えた場合、それらの行為が性被害にあたるかどうかを問うたものです。

質問項目は
①性的な言葉を言われる/性的な話をされる、
②下着を脱いでみせるよう強要される/脱がされる、
③無理やりお尻、胸、背中など身体をさわられる、
④無理やり性器をさわられる、
⑤自慰(マスターベーション)をしてみせるよう強要される、
⑥したくないのに性交される/させられる(未遂を含む)の六つですが、
男性が被行為者であるほうが女性が被行為者である場合に比べて「性被害にあたらない」とする否定的回答が全体的に高くなっていました。

また、③「身体をさわられる」については、男性→女性(男性から女性に行われる)の場合は、男性回答者のうち89.7%(以下の数値もすべて男性回答者の中での数値)が「性被害にあたる」と答えているのに対して、男性→男性の場合は47.0%、女性→男性の場合は57.5%が「性被害にあたる」と答えており、女性が男性にされる場合に比べて段違いに少なくなります。

②「下着を脱いでみせるよう強要される」についても、男性→女性の場合は95.7%が「性被害にあたる」と答えているのに対して、男性→男性であれば67.8%、女性→男性であれば80.9%と、性被害の肯定率は下がります(なお、女性回答者は、この②の場合、それぞれ98.6%、72.3%、85.2%が「性被害にあたる」と答えており、女性のほうが男性以上に男性の身の上に起きたことを「性被害」と捉える傾向があると言えます)。

④「無理やり性器をさわられる」についても同様の傾向がありました。

そう捉える理由として、同調査の自由記述では、「男の人は冗談で脱いだり脱がされたりしている」「男同士だとどうしても被害感が少ない」「男性同士の場合、性交以外は友達間で十分ありえることだと思う」などの回答があり、おふざけやスキンシップの一部という認識があるようです。

「嫌なのに身体が反応してしまう」生理現象…同性からの性加害を受けた男性が被害を即座に認識できない理由とは_2

しかし、たとえ行う側がおふざけだと思ってやっていても、された側は長年にわたって心身や人間関係の不調に悩まされることがあり、自殺などの深刻な影響が出ることもあります。