肥満、中性脂肪、コレステロール値が高いとリスクが上がる

前立腺とは、男性だけが持つ生殖器の一部となる小さな臓器で、膀胱から出た尿道の周りの両脇にあります。
前立腺は精液の一部である前立腺液を作り、精子の活動を活発化したり保護したりしています。前立腺がんの初期は自覚症状はあまり見られませんが、尿が出にくい、排尿の回数が多いといった症状が出ることもあります。進行すると、排尿時に痛みを感じたり、尿や精液に血が混じったり。さらに進行した場合、臀部や腰に転移し、背中や腰の痛み、足のしびれ、下腹部のむくみなどの症状が現れることがあります。

前立腺がんは欧米では男性のがんの中で発症頻度の高いものの一つで、日本でも50歳を過ぎると増えるため、中高年男性にとっては気をつけたいがんです。また近年、前立腺がんを発症する人は増加の一途をたどっています。

そんな前立腺がんのリスクを上げる原因がいくつかあります。

その1つは肥満です。

肥満や低体重の判定に用いられるBMIという数値があります。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値で、日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」に分類されます。

このBMIが高ければ高いほど前立腺がんが見つかりやすい、または大人になってからの体重増加が激しいと前立腺がんのリスクが上がったというデータがあるのです。

肥満と前立腺がんのリスクについては、まだ研究中ですが、脂肪や脂肪分が多い食事が引き起こす「炎症」が前立腺で腫瘍となる細胞を増殖させたり、がんから身を守る免疫機能を下げたりしているのではないかと言われています。

ちなみに中高年が夜中に尿意をもよおす原因のナンバーワンとなっている前立腺肥大症も、実はメタボリックシンドロームの一種ではないのかという仮説もあるので、前立腺と肥満は深い関係にあるといえます。

肥満はほかにもさまざまな病気の原因にもなりますが、BMIが30以上の人は前立腺がんのリスクが高いということも心にとめておきましょう。

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もう1つの原因は、中性脂肪、コレステロール値の異常です。

前立腺は体の中でも脂質が集まりやすい臓器です。そのため、健康診断で中性脂肪やコレステロール値が高い人や、油っこい料理が好きな人は前立腺がんのリスクが上がると言われています。

また、60歳以上の男性で中性脂肪が高い人とそうでない人を比べると、高い人のほうが前立腺がんのリスクが2倍になったというデータがあります。ですが、脂質異常症の人に治療を行ったところ、前立腺がんになるリスクが7%下がったというデータもあるので、しっかり治療することでそのリスクを下げることにつながります。

もし、健康診断で脂質の項目が高いなら、無視せず、医師に相談するようにしましょう。

肥満や脂質異常症などの生活習慣病はほかの病気のリスクも上げるので、高脂肪食や摂取カロリーを減らして、運動量を増やすようにするのがおすすめです。