残された時間に選んだのは「仕事」

――それも、覚えてないんですね(笑)。末期がんが発覚してから、一般的ながん治療はしなかったそうですね。

うん。抗がん剤は成功率10%って言われたんですよ。そりゃ、やんないでしょ。残りの80~90%が再発か転移で、半年間入院して悪化してダメでしたって言われたら、水の泡じゃないですか。逆に成功率が80~90%ならやったかもしれないけど、10%じゃそのリスクは背負えないってことでやめました。ただ、厚労省が認めてない免疫手術ってのもいっぱいあって、それはやりました。血を入れ替えるんだけど。

――効果は感じましたか?

いや、ないよね。ただ、去年の6月に余命半年と宣言されて、それからすぐに血を入れ替えたから、その効果でまだ生きられてるのかもしれない。それはわからないよね。しかも、その手術は一括払いで数百万円もするんだよ。くらたまが出してくれたけど、くらたまには感謝しかないね。

末期がんになってから性欲と食欲ゼロ。余命半年宣告の叶井俊太郎「最後だから死ぬ前に会いたいんだって言えば、たぶん何でもできるよ」_3

――末期がんの発覚後、叶井さんは残された時間の使い道に「仕事」を選びました。

周りは仕事をやめて、好きなことやったほうがいいよっていう人がほとんどだったけど、旅行に行っても、仕事が気になってうかうか観光とかできないんだよ。だったらこのまま仕事をやっていたほうが楽しいから、そっちを継続することにしました。

やっぱり末期がんっていうのはパワーワードで、仕事がうまくいくんですよね。いままでだったら「こんな映画、上映できねえよ」って言われるような作品を買い付けてきても、「俺、末期がんで生きてるかわかんないだよ」って言うと「やるよ」と言ってくれる(笑)。

今日の取材だって、それできてくれたわけじゃん。だから、使いまくってるよ。仮に相手が女の子だったとしても「最後だから死ぬ前に会いたいんだ」って言えば、たぶん何でもできるでしょ。でも俺、末期がんになってから性欲ゼロなんだよな。

――あくまでも「仮に…」の話ですね。

まあ、昔キャバクラで遊んでた何人かの子には言ってみたよ(笑)。

「最後に民宿に泊まって、温泉入ったりご飯食べたりしたい」って言ったら、みんな「いいよ」って。民宿行ってくれることは夜もOKってことでしょ。「できるんだ!」と思った。もちろん、そんな気力ないんだけどさ。