1980年以降に生まれた世代は認知症リスクが6倍に? スマホが加速させる認知症のリスク要因、オンライン習慣がもたらす怖すぎる未来
日常的にインターネットを使用している1980年以降に生まれた世代が65歳以上人口の多数を占める2060年には、認知症のリスクが4〜6倍になる可能性もあるといった試算がカナダの研究者によってされている。スマホなどの使用によるオンライン習慣が、なぜ認知症のリスクを高めるのか。『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『スマホはどこまで脳を壊すか』 #3
子どもは毎日1時間以上の運動をして筋肉や心肺機能を育てていくことが必要
健康的な生活を送るためには、どの程度の運動習慣が必要なのでしょうか?
世界保健機関(WHO)は年齢層ごとに推奨される運動習慣についてガイドラインを発表しています。
5〜17歳の子どもたちは、1週間を通して1日あたり60分の有酸素運動と週3回の筋力増強運動が推奨されています。やはり、身体が急速に成長していく期間の子どもたちにとっては、毎日1時間以上の運動をして筋肉や心肺機能を育てていくことが必要であるといえます。
課外の部活動で運動部に在籍している子どもたちは、特に意識せずとも推奨される目標を達成していると思います。一方で、文化部や、部活動をしていない子どもたちは、登校前や放課後の時間にランニングをするなど、意識的に運動習慣を取り入れる必要があるでしょう。
18〜64歳の成人は、1週間あたり中強度の有酸素運動を150〜300分または高強度の有酸素運動を75〜150分と、週2回の筋力増強運動が推奨されています。中強度の有酸素運動は、ウォーキングや社交ダンスのような、息の上がらない程度の運動を指します。高強度の有酸素運動は、ランニングや水泳などのやや激しい運動を指します。各々の体力や筋力に応じて、無理のない強度の運動を組み合わせて取り入れるといいでしょう。
また、生活の中でちょっとした運動習慣をつけることも有効です。例えば、数階分であればエレベーターやエスカレーターではなく階段で昇り降りをする、短距離なら歩いて移動するなど、日常的に中強度の有酸素運動を簡単に取り入れることができます。
65歳以上の高齢者は、成人の推奨される有酸素運動と筋力増強運動に加えて、転倒による怪我などを予防するため、バランス感覚を鍛える動きを取り入れたマルチコンポーネント運動を週3回行なうことが推奨されています。
手軽にできるバランス運動は、片足立ち、かかと・つま先立ち、横歩き、後ろ歩きなどがあります。特殊な器具なども必要なく家の中でもできますし、お散歩がてら近所の公園に出かけて行なうのもいいでしょう。
より本格的なバランス運動としては、ヨガや太極拳などが知られています。趣味の一つとして取り入れて、例えば教室に通って新しい友達ができれば、認知症のリスク要因である「社会的孤立」を防ぐことにもつながるといえるでしょう。
文/榊 浩平
#1『約6割の子どもが勉強を中断して即レスしてしまうスマホのメッセージの罠。通知音だけでも集中力が低下する驚くべき実験の事実』はこちら
#2『ネットを毎日使い続けた子どもの3年後の脳画像が衝撃…認知機能、記憶や学習に関わる海馬のほか、言葉や感情を処理する領域の発達が止まっていた』はこちら
『スマホはどこまで脳を壊すか』 (朝日新書)
榊 浩平 (著)、川島 隆太 (監修)
2023/2/13
¥935
256ページ
ISBN:978-4022952035
【「脳トレ」の川島研究室が緊急提言】
スマホに依存しすぎると
思考の中枢「前頭前野」がやられる!
「ものを考えられない」
「何かに集中することができない」
スマホ依存を放置した先に待つのは、
認知症予備軍の人たちであふれる社会か!?
スマホを常用し、脳に“ラク”をさせていると、
成長期の子どもなら脳発達が大きく損なわれ、
成人なら不安・抑うつ傾向が高くなることが明らかに。
最新研究で見えてきた衝撃の未来。
■目次
はじめに スマホは人を幸せにするのか?
第1章 思考の中枢を担う前頭前野を守れ
脳は領域によって機能を分担している/大脳には四つの部屋がある/前頭前野の大切な役割①認知機能/前頭前野の大切な役割②コミュニケーション/脳の活動を観察する方法―脳機能イメージング/10代の過ごし方がその後の脳を左右する/加齢によって萎縮が早く進んでしまう前頭前野/前頭前野はどうしたら鍛えられるのか?
第2章 スマホはここまで学力を破壊する
私たちの生活の一部となった「オンライン習慣」/「インターネット依存」とアルコール依存の類似性/スマホの使いすぎが子どもたちの学力を「破壊」/勉強してもよく寝ても「3時間以上のスマホ」で台なしに!/スマホの使用時間を減らせば成績アップ/スマホ横目に3時間勉強しても成果は30分/「ながら」という悪癖/「会話のラリー」というインスタントメッセージの罠/通知音が鳴るだけで低下する集中力/スマホやタブレットでの学習は脳がはたらかない?/インターネットを使い続けた、衝撃の3年後
第3章 オンライン・コミュニケーションの落とし穴
コロナ禍におけるコミュニケーションの変化―対面からオンラインへ/コミュニケーションとは?/ヒトにとってコミュニケーションは必要不可欠/親子での会話が子どもの健やかな脳を支える/人間の脳には負荷が必要/オンラインと対面ではコミュニケーションの質が違う/「つながっている」と感じるとき、脳と脳も同期する/なぜ人混みの中でも足並みを揃えて歩けるのか?/授業形式によって子どもの脳活動は変わる
第4章 オンラインでは脳は「つながらない」
「ひとりでボーッとしている状態と変わらない」/「誰と」で変わるコミュニケーションの質/老若男女を問わず盛り上がる話題とは?/2019年に始まった実験が予期せぬ方向へ/「オンラインでは何かが足りない」から浮かんだ仮説/なぜオンライン会話では脳が同期しないのか?/画面越しの映像はパラパラ漫画と同じ/オンラインは「きっかけ」で「つなぎ」
第5章 スマホ漬けの脳はどうなるか
オンライン習慣の先に見える未来/将来の認知症リスクを高める可能性/リスク要因① 学習の質が低下/リスク要因②うつ病とSNS/リスク要因③「つながる」はずが孤独に/リスク要因④ごろごろして運動不足に/「リスク」をどのように受け止めますか?
第6章 すぐ始められる脱オンライン習慣のススメ
私たちの生活はオンラインなしには成り立たないのか?/脱オンライン習慣の効果―国内外の実例/言うは易く行なうは難し?/最大の拷問はプロ野球の速報/紙の地図頼りのドライブに初挑戦/今日からできる脱オンライン習慣のススメ/オンライン習慣との上手な付き合い方
おわりに 前頭前野の「自己管理能力」でスマホから身を守れ!