唯一無二の漫画原作者として
昼も夜も関係なく、さまざまな人と接し、飛び交う会話の中で生まれるや作品の数々。草下氏は現在、漫画『地元最高!』の編集だけでなく、様々な作品の執筆や編集をしながら『地元最高!』を刊行している彩図社の社員として編集長業もこなしている。現在、自身が担当している作品は立ち上げ前のものも含めると8作品にものぼるそうだ。
「つい最近、別冊ヤングチャンピオンで連載中で単行本が出たばかりの漫画『私刑執行人』は原作を書いています。私が執筆した小説『半グレ』のコミカライズも連載中で、これは漫画家・山本隆一郎先生のネームチェックと裏社会の情報提供が主な仕事ですね。ヤンマガwebの『ごくちゅう!』や『ゴールデンドロップ』も情報提供とストーリー協力で関わっています。
編集として関わっている『地元最高!』を加えて、連載中の5作品がすべて犯罪ものなので、そろそろ犯罪以外の作品もやりたいなぁと仕込み中のものもあります」
好調に見える仕事ぶりだが、過去を振り返ると、時代に先行し過ぎた内容だったために数字としては振るわなかった作品もあるという。
「ビッグコミックスピリッツで2018年に連載開始した『ハスリンボーイ』はシナリオも書きましたが、翌年に連載を打ち切られちゃいました。大学の奨学金を返済するために裏稼業に手を染める大学生の話でしたが、当時としてはその設定に“リアリティがない”とか“主人公がバカすぎる”って評価が散々で。でも、闇バイトが明るみになってきた今ならこの設定は十分にリアリティーがありますよね」
現在は裏社会ものの作品がメインとなっているが、かつてはロシア文学好きが高じて東欧の独裁国家を舞台とした漫画『ぼくのツアーリ』(ヤングエース)という作品の原作も担当した。この作品もロシアとウクライナ間に戦争が勃発した今なら、注目されてもおかしくない。
「これは旧知の編集者からの、旧ソビエト時代の重たいテーマの物語をやりたいというオーダーをもとに始めた連載でした。2019年にコミック化をしましたが、2巻で終わってしまいました。
ソ連の崩壊によって誕生した未承認国家をめぐる話なので、めちゃくちゃマニアックですよね。でもまさに今のロシア・ウクライナ情勢を見ると、読み物として興味深いんじゃないかと思うんですよね」