事件直前に地下食料品店で万引きを試みるも

事件当日の8月6日12時10分。対馬は新宿の商業施設地下の食料品店にて880円相当のベーコンとオリーブオイルを万引きしようと試みる。しかし、女性店員に110番通報され、駆けつけた警官から厳重注意を受けた。商品を買い取ることで万引きに関しては不問となったが、刃渡り6.4センチのカッターナイフを所持していたという理由で後日、銃刀法違反容疑で任意の取り調べをする旨を伝えられていた。

「万引き事件後の対馬は警察官に連れられ一度川崎市の自宅に戻りますが『(通報した店員を)殺してやりたい』と考えた。しかし、すでに店は閉店していたため、以前から考えていた電車内での無差別殺人を実行することを決意。包丁、はさみ、サラダ油をバッグに入れてアパートを出たようです」

万引きを通報したことで逆恨みされ、下手をすれば被害者になっていた可能性もあった食料品店の店員は「詳細なことは本部からでないと話せない」としながらも、
「2年経った今でも当時のことは鮮明に覚えてます。元々この店が狙われていたわけですし、万引きがキッカケでまさかあんな怖い事件にまで発展するとは思っていませんでしたから……」と憂い顔で当時を振り返った。

対馬被告が万引きしようとした食料品店
対馬被告が万引きしようとした食料品店
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アパートを出た対馬被告は午後8時18分、新宿行きの各駅電車に乗り込み、登戸駅で快速急行に乗り換えた。そして、電車が祖師ヶ谷大蔵駅付近に差し掛かった頃、持っていたトートバックから刃渡り約20センチの牛刀を取り出し、隣に座っていた女子大生の胸を右手で逆手に持った牛刀で二回刺し、逃げようとした女子大生を背後から執拗に襲った。

その後も対馬被告は別の乗客を次々と襲いながら前方の車両へと移動。車内の床にサラダ油をまき、ライターで火を付けようとまでした。

祖師ヶ谷大蔵駅のホーム
祖師ヶ谷大蔵駅のホーム

「ですがサラダ油では着火するはずもなく、車内に火は燃え広がりませんでした。対馬はその後、事件発生を受け緊急停止をした電車から車外に降り、線路を歩いて祖師ヶ谷大蔵駅に向かい、駅員の様子をうかがいながら改札口から逃走。そして、約3キロ離れた都営住宅の駐輪場で見つけた無施錠の自転車を盗み、杉並区のコンビニ店でビールを勝手に飲んだ後、店員に『事件の犯人だ』と申し出て通報を受けた警察に逮捕されました」(前出の記者)