戦後生まれのシニアが「ネット動画」から右翼に転向
シニアがシニア右翼になった原因の前提にはネット技術(ブロードバンドインフラ)にあり、また未完のままで終わった戦後民主主義の弱さにこそあるとした。戦争を知らない戦後生まれのシニアが「ネット動画」からもたらされる「一撃」で次々とシニア右翼に転向していく。だが右翼の対義である革新側も右翼と同等に高齢化が進んでいるではないか、とする批判はたしかに事実である。
革新勢力の筆頭である日本共産党の党員は1990年代前半の約50万人から2020年現在30万人を割り込みピーク時からほぼ半減となった。機関誌『しんぶん赤旗』の購読者数は1970年代に300万部を超え『毎日新聞』など全国紙と遜色ない発行部数を誇ったが、現在では辛うじて約100万部と、3分の1に減少している。
日本共産党や傘下団体が主催する反戦・反政権集会に行くと、その参加者のほとんどがディープシニアで40代はぼちぼち、30代はほとんど見られない。まして20代の若者は1000人規模の集会であっても数える程度である。党員や支持者のシニア寡占は、革新側でも凄まじいものがある。
加齢したシニアがシニア右翼となるのであれば、革新側でもシニアが多いのはどういう訳だろうか。答えは簡単で、彼らは強力な戦後民主主義の護持者であり「ネット動画」による一撃を食らってもなお動じないほどの確固とした価値観を有しているからだ。
強力で体系化された価値観を有している者は「ネット動画」というノイズに左右されない。日本共産党を支持するシニアも高速インターネットを利用し、スマートフォンを保有し、ネット動画に触れていることは明らかだが、彼らの民主的自意識が強烈なゆえにそういった動画や歴史修正主義に傾倒してしまう弱さを持ちえないのである。