物価高と選挙対策

日本の物価は今、輸入物価上昇→企業物価上昇→消費者物価上昇という波及経路をたどっている。そこに国内消費の回復や賃金上昇による影響はほとんどない。

過度の円安進行は必ず物価高に直結する。それは消費を冷やし、内需型産業のコスト負担を増やし、輸出産業ですら素材輸入コストで収益が圧迫される。

それでも政府は円安対応に無策なまま、物価高には財政支出で対応しようとしている。それで7月の参議院選挙まで乗り切ろうとする算段なのだろう。

「キシダに投資を!」のかけ声もむなしく…“丸腰ニッポン”の円はどこまで下がるのか?_b
5月5日、ロンドンの金融街であるシティで講演し、「Invest in Kishida!(キシダに投資を)」と訴えた岸田首相だったが……

しかし、それは選挙対策であって経済政策ではない。補助金でガソリン価格を抑えても、低所得層に5万円配っても、効果は一時的なものだ。

岸田首相の頭の中に日本経済に対する中長期的戦略がなく、この夏の参議院選挙に勝てば3年間は政権安泰という目先の戦術しかないのだろうか。

今こそ日銀は政治からの独立性を取り戻し、「物価の安定」つまりは「通貨の信認」という本来の使命に立ち帰るべきではないだろうか。

写真/共同通信社 AFLO