G20、G7も「素通り」

ここまできたら日本単独では円安に対応できそうもない。ならば国際協調だのみか。ちょうど4月20日にはワシントンでG20(20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)とG7(主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)が予定されていた。

G20は1997年アジア通貨危機を教訓に、過度な為替変動に対応するために主要国だけではなく、新興国も含めて協調しようと始まった(1999年初会合)。

また、前回のG20(22年2月18日・ジャカルタ)でも米欧の金融引き締めに警戒し、「コミュニケーションのとれた出口戦略(金融正常化)」という表現で配慮を求める声明が採択されていた。

アメリカの金融引締めによるドル高で、自国通貨下落に苦しむのは日本だけではない。多くの新興国と声を合わせ、円安対応に動きたいところだった。

だが、4月20日のG20はロシアの参加に反発した米英カナダなどの途中退席もあって、共同声明すら出せなかった。

それならば、ロシアがいないG7があるとばかりに、鈴木俊一財務大臣が急激な円安への危機感を表明したが、こちらも各国からこれといった反応もなく、外信から「素通りされた」と報じられる始末だ。結局、G7の共同声明も最後まで為替の安定に触れることはなかった。

鈴木財務相としては、過去にG7で為替市場の「過度の変動や無秩序な動きは経済に悪影響を与える」と再三確認されたことにすがったのだろう。

しかし「過度」であるとか「無秩序」であるとかは、投機などによって経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)から乖離しているかどうかで判断される。

だが、残念ながら今の円安はそのファンダメンタルズと一致している。IMF(国際通貨基金)の高官も日本経済新聞の取材に、「ファンダメンタルズを反映した形で円は動いている。無秩序になっていないのだから、安定させようとする必要はない」と答えている。

そう、世界は金融正常化に動いているのだ。実際、G20、G7を前に4月14日、シンガポールは3回連続の金融引き締めを発表し、韓国中央銀行は0.25%の利上げを決定し、欧州中央銀行(ECB)は理事会声明で量的緩和を「7~9月期に終える見通しが強まった」と明記している。

ところが、日銀はG20、G7が開催される4月20日に、複数日(21~26日)にわたって「連続指し値オペ(公開市場操作)」を実施すると発表したのだ。0.25%の利回りで日銀が国債を無制限に買ってくれるのだから、長期国債の価格はそれ以上に安くはならない(長期金利は0.25%以上に上がらない)。

つまり、日本はあくまでも金融緩和を継続するという姿勢を鮮明にしたということだ。これは円売り刺激に他ならない。