5月4日、FRB(米連邦準備制度理事会)が公開市場委員会(FMOC)を開き、0.5%の利上げと6月からの資産圧縮を決定した。日本はゴールデンウィークのど真ん中で、日本市場だけが止まっていた状態だ。変動リスクに対応できないときに、最も大きな変動リスクが出てくることに警戒心が高まっていた。

すでに4月6日、FRBは3月に開いたFOMCの議事要旨を公表したが、そこでは量的引締め(量的緩和で膨張した保有資産の圧縮)を5月のこの会合で始めることが「正当化される」と明らかにされていた。

しかも前回(2017~19年)の倍となるペースで圧縮され、3年で3.4兆ドル(約420兆円)、あるいはそれ以上減らすこともありうるという。つまり、市場の予想をはるかに超える速さと規模で資産圧縮がありうると示唆していたのだ。

それだけではない。4月21日にFRBのパウエル議長は通常0.25%刻みの利上げ幅を倍の0.5%(2000年5月以来)となることも「テーブルの上にある」と発言した。資産圧縮と0.5%の利上げがセットになると、前例のない激しい金融引き締めとなる。

投資家たちは0.5%の利上げが選択肢として示唆されると、「市場は直ちに0.75%の可能性を織り込み始める」と警戒し始める。

結果、0.75%利上げについてはFRBが慎重な姿勢を示したことで市場は落ち着きを見せたが、今後も0.5%刻みの利上げが繰り返される見通しが固まりつつある。

口先介入は不発に

おかしなもので、金融市場は直近の最安値、最高値を意識する。円の対ドルレートでいえば2015年6月の最安値だ(1ドル=125円後半)。これが心理的な節目とされる向きもあった。

しかし4月13日、円安はこれを一気に超えて、126円前半という20年ぶりの安値をつけた。

この安値にあわてたのだろう。鈴木財務相は4月15日、現状を「悪い円安と言えるのではないか」と発言。すると「円安は日本経済にプラス」と言って譲らなかった日銀の黒田総裁までもが4月18日、「大きな円安や急速な円安はマイナスが大きくなる」と見解修正。

通貨当局のツートップが市場をけん制する口先介入へと乗り出したのだ。ところがその翌19日、円相場は1ドル=128円にまで加速した。口先介入は完全な空振りに終わったといえる。

そもそも口先介入は他には動けない、つまり無策ゆえの「口先だけ」と見透かされるリスクがあるのだが、実際に円は20日には129円まで下落した。