OSO18の足取りが掴めない理由
ヘアトラップは、ヒグマの「背こすり」という立ち上がって木に背中をこすりつける習性を利用し、木に巻いた有刺鉄線で体毛が採取できる。また、クマが立ち上がっているため、撮影カメラをまわしておけばクマの大きさも測ることがこともできるし、体毛からDNAを採取し撮影に成功すればOSO18の移動経路の把握や外見的特徴を明確に掴める。
実際、標茶町では設置されたヘアトラップでOSO18の体毛を採取することに成功している。しかし、残念ながら撮影カメラの不具合でこの時のOSO18について鮮明な映像は残っていない。
ハンター歴60年の北海道猟友会標茶支部長の後藤勲氏が警鐘を鳴らす。
「5月になれば放牧が始まるのでそろそろ姿を現わしてもおかしくない。ヤツは頭がいいから人に見えない沢を歩いたり、川の中を歩いたりして足跡を探させないように動きます。OSO18の追跡は足跡がなければ探しようがありません。データが集まってきてるとはいえ、そう簡単に獲れるとは思えません」
OSO18はこれまで仕掛けてきた罠を一蹴し、監視カメラにもほとんど姿を捉えられていない。高度な学習能力と他の個体と比べて人間に対して強い警戒心を抱いているのが理由だ。
「普通のクマなら一度牛を襲って食べたなら、必ず食べきれなかった分を後で食べに戻ってきます。春先は地面も凍ってるので、食べ残しを地面に埋める事もできないので、そこを狙って仕留めることもできる。
だがヤツの場合は現場にハンターが向かうと、人間の匂いが漂っている間は姿を現わしません。クマは嗅覚が非常によく、2キロから3キロ先の匂いもわかるので捕獲は難航を極めます。さらにOSO18はカゴ付きの罠を仕掛けても、上手に半分だけ体を入れ、お尻をだして餌を取っていく知能も備わっています」(前出・後藤氏)