包丁をベッドに突き刺して話し合うことも…

――現在、田中さんは公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の代表を務めるとともに、依存症問題を抱える人を回復の道へとつなげるインタベンショニストとしてもご活躍されています。耳なじみのない職業ですが、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

依存症問題を抱える人とその家族が話し合いをしている場に、私が参加して治療を受けることを勧めるというのが主な仕事です。通常、私が参加することは依存症者本人には知らせていない状態で始まるので、最初は依存症者の方々が激しい拒否反応を見せることもあります。

ご家族がいるところだと、なかなか話が進まなかったので、私が「ちょっと2人で話をさせてください」とお願いしたら、依存症者の方が包丁を持ってきて、それを部屋のベッドに突き刺して「さあ、一対一で話し合おうぜ」なんてことになった現場もありました。

「ギャンブルに給料を全額使ってしまうんですが、自分は大丈夫でしょうか?」包丁をベッドに突き刺して話し合い、激高して投げ飛ばされたことも…。ギャンブル依存症問題を抱える人が増加し、問題が深刻化している理由_3
高知さんや清原和博さんとともに厚生労働省の依存症の理解を深めるためのイベントに登壇する田中さん(右から一人目)

――とんでもない状況ですね。

激高して投げ飛ばされたこともありますし、精神的にも肉体的にも負荷が大きい仕事です。一件一件パターンが違うから、全然慣れることもなく、面会前日は毎回眠れません。でも、やっぱり第三者が介入するのは効果的です。

家族で話し合っても解決しない場合は、結局何度話し合っても、パターンが出来上がって堂々巡りに陥りがちです。それに、家族だけで話し合うと全員が感情的になりやすいんです。そこに感情に巻き込まれない第三者がいると話し合いが冷静に進みます。