“ひとり”を明るく救ってくれる、ちひろさんの言葉
──原作も映画も、生きるヒントとなるちひろさんの名言が多かったのですが、有村さんがいいなと思ったセリフはありましたか?
「みんなで食べるご飯も美味しいけど、ひとりで食べても美味しいものは美味しい」というセリフですね。ひとりって、孤独でネガティブな印象があるけど、私はそうではないと思っています。孤独を愛する人は世の中にたくさんいるし、ひとりのほうが楽ならば、それがその人の幸せだと思うんです。ひとりでいることへの許容が、その言葉にはあると思いました。
例えば学校で居場所がなくて、みんなとは別の場所でお弁当を食べることは、その子にとって救いだったりするんじゃないかと。ちひろさんみたいな人が「そういうひとり時間、すごくいいじゃん」と言ってくれたら、救われると思うんです。この映画にも原作漫画にも、心を救って気持ちを上げてくれる言葉がいっぱいありました。
孤独は寂しくない、孤独を楽しむ気持ち
──有村さんもちひろさんと同じ考えですか?
そうですね。私は孤独だからこそ、自分が大事にしたいことが見えてくると思っています。「これはオープンにしてもいいけど、こっちは秘密にしておくんだ」みたいな感じで。そんな風に楽しめるようになれば、孤独って意外と楽しいのではないでしょうか。
人間はお互い100%わかり合えることはないと思っているんです。それが家族でも友達でも好きな人でも、知らないことはたくさんあるはず。だからこそ「何を考えているのかな?」と思ったり、相手を思いやったり、人はそうやって学習していくと思う。そういう気持ちのベースにあるのは孤独なんじゃないかと思います。
──ひとりだからこそ考えられることもありますし、ちひろさんみたいに軽やかに生きられることもある。孤独は決して寂しいことではないですね。
自分に任された仕事をこなすのは自分ひとりじゃないですか。戦うときはみんなひとり。成績が学年トップの子は、それを維持するためにひとりで努力するし、アスリートの方もコンディションを維持していい結果を残すためにひとりで戦っていますよね。それは孤独なことかもしれないけど、ひとりで体験したからこそ見えてくる景色もありますから、孤独=寂しいでは全くないと思います。
取材・文/斎藤香 撮影/MISUMI ヘア&メイク/尾曲いずみ スタイリスト/瀬川結美子
有村架純
1993年2月13日生まれ。兵庫県出身。2010年ドラマ『ハガネの女』(EX)で俳優デビュー。2013年連続テレビ小説『あまちゃん』(NHK)の好演が話題になり、2017年連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)では主演を果たす。2015年主演映画『ビリギャル』の演技で日本アカデミー賞主演女優賞、新人俳優賞などを受賞。2021年『花束みたいな恋をした』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。ほか出演映画は『前科者』『月の満ち欠け』(いずれも2022)など多数。近作はNHK大河ドラマ『どうする家康』(2023)
映画『ちひろさん』
風俗嬢の仕事を辞めて、海辺の街のお弁当屋さんで働いているちひろ(有村架純)。元風俗嬢であることも隠さず、ホームレスのお爺さんから近所の子供まで誰にでも分け隔てなく接するので、彼女に惹かれる人は多い。中でも厳格な家庭に息苦しさを感じている高校生のオカジ(豊嶋花)とシングルマザーのヒトミ(佐久間由衣)の愛を求めている小学生のマコト(嶋田鉄太)とは次第に家族のように仲良くなっていく。人懐っこくて朗らかなちひろだが、彼女自身も家族関係が複雑で孤独を抱えて生きていたのだった……。
2月23日(木・祝)Netflix世界配信スタート!&全国劇場にて公開!
配給:アスミック・エース
公式サイト:https://chihiro-san.asmik-ace.co.jp
©2023 Asmik Ace, Inc. ©安田弘之(秋田書店)2014